第1章 繋がる糸
その日は何だか気持ちが浮わついていて、食事を済ませた私は早めのお風呂に入り、湯船に浸かっていた。
今日一日で華龍の始解が出来、浦原との出会いという大きな変化が舞い降りたとても刺激的な一日だった。
トントン、と扉を叩く音が聞こえ、返事をすると坂原の声が帰ってくる。
坂原「……湯加減は如何ですか?青蘭様。」
「ありがとう、坂原。丁度良いわ?」
聞こえたはずの返事に黙り混む坂原を不思議に思い、その名を呼ぶと、スミマセン、と小さな返事が返ってきた。
なぜ謝るのかと問いただしても、坂原は謝罪の言葉を重ねるばかりで埒が開かない。
「さーかーはーらー?スミマセンしか話せないのかなー?」
坂原「………スミマセン、青蘭様。私めは貴女様にお仕え出来、この上ない幸せでございます。」
脈絡の無い坂原の言葉に私の頭の中には更にハテナマークが増えていく。返す言葉も無くした私は小さく息を吐き出すと、お風呂から湯船から立ち上がり用意しておいた手拭いで体の水分を拭き取った。
「………上がるわ。外で待ってて。」
坂原「………仰せのままに。」
ガラ、と音を立て開かれた脱衣所の扉が静かに閉められたのを感じた私は、寝間着を羽織り軽く帯を締めた。
脱衣所から出るとすぐ向かいの壁に腕を組み寄りかかるようにして立つ坂原の姿。
坂原「…………。」
私が出て来てもなお俯いたままの顔にそっと手を添えると、びくり、と小さく跳ねる坂原の体。
「………もうすぐ私が居なくなるから……寂しくなっちゃったの?」
私の問いに俯かれたままの頭が小さく縦に動く。
私よりも大人な彼が見せる甘えた態度に思わず緩んだ口許。
「……ふふ。何も寂しいのは貴方だけじゃないわ?……せっかくだし、今日は坂原の腕枕でも借りようかしら?」
坂原「__なっ///青蘭様っま、誠でしょうか?」
珍しく顔を赤らめ動揺する姿に少しだけ楽しくなった私は悪戯な笑みを浮かべながらそっと呟く。
「貴方は戯れ言でもいいの………?」
坂原「!!!い、いえ………誠であってほしいです///」
坂原の答えにニッコリと笑顔を返した私は、その後坂原の腕に抱かれながら華龍とともに眠りについた。
その間、坂原が理性と欲に苦悩していたことに気づくこともなく、深く夢の世界へと足を踏み入れて。