第1章 繋がる糸
喜助さん、と名乗るその人は挨拶が済まされると、この場から立ち去っていってしまった。
(私…何か気に障ることでもしちゃったのかしら…)
私が心配していると、夜一さんが抱きついてきた。
「ーーーきゃぁっ!?」
不意をつかれ、驚いていると夜一さんはとても楽しそうに笑っていた。
夜一「くくっ……喜助の奴は厠じゃろ。ま、お主のせいではないよの?……にしても、想定以上じゃったわ♪からかいがいがありそうよのぅ~♪」
「………?…そっか、厠だったんだ!私、何か気に障ることしちゃったかと心配しちゃった。」
夜一「まぁ、ある意味ではそうかもしれんがの~w……ま、あやつも男だということじゃな♪」
私は夜一さんの言葉の意味が分からず、首をかしげる。
夜一さんはケラケラと笑いながら私の頭を撫でていた。
喜助さんが部屋に戻ってきて、私の方を向き、ニコリと笑った。
(ーーー綺麗な人だな…。)
私は思わずその端正な顔を見つめてしまう。
少したれ目の眼は淡い緑色をしており、柔らかな金色の髪とよく合っていた。
柔らかい印象を抱くが、その中にはしっかりとした芯が通っているような……とても魅力的な人だった。
喜助「いやいや、すんません!挨拶の途中で、退室してしまい……改めてっ今日からアタシも青蘭さんの修行を見させてもらいますので♪仲良くしてくださると嬉しいッス♡」
そう言うと喜助さんは私の手を両手で握り、ヘラヘラと笑った。
私が喜助さんに微笑み返すと、喜助さんの頬に少し赤みが差した。
「これから、よろしくお願いしますっ!喜助さんっ♪」
喜助さんはパッと視線を逸らすと、掴んでいた手を離し、後ろを向いた。
喜助「………も、もちろんッスよ!(~~~////くぅっ可愛すぎッスよ…)」
夜一は青蘭を胸に抱き締めながら、二人のやり取りを見ていたが、ふと、体に固いものがあたり、そちらを向く。
夜一(___斬魂刀っ?!)
青蘭の脇差しに刺さっているのは間違いなく斬魂刀と思われる刀。
夜一「…… 青蘭。お主……斬魂刀をどこで手に入れよった?」
青蘭は華龍を優しく擦りながら答えた。
「この子……華龍天睛は、白鳥家に代々伝わる宝刀だったの……。」