第22章 story21“一瞬先の未来へ”
「離れても繋がってんだろ……家族は」
「!!」
清正の一言に彩芽は目を見開いた。
同時に心がじんわりと温かくなった気がした。
「…うん、そうだよね」
「わかったら信じて待っていろ」
「以前にも言ったであろう、俺達が負けるはず等ないと」
自信に満ちた三成と清正の顔はとても頼もしく見えて、彩芽を安心させた。
「天候の安定している間に上田へ発つのだぞ、お前の方が心配なのだからな」
「今度は草履をなくすなよ?」
「お、落とさないよっ!」
二人に笑われて彩芽は頬を膨らまして言い返した。
「ほら、そろそろ戻れ…幸村が待ってるだろ」
「え…っ!あ…幸村!いつからあそこに…?」
清正が顎で指した方を見るとこちらの様子を見つめる幸村の姿があった。
「…あれはまた独占欲の強そうな」
「彩芽の今後の苦労が目に浮かぶ…」
「え??何?ねぇ、二人とも…?」
「いいから行け、後…俺達の見送りは必要ないからな」
「清正…どうして…」
「何でも、だ」
それだけ言うと清正は彩芽の背中を軽く押して幸村の元へ行くように促した。
まだ話したそうな彩芽だったが、幸村を待たせている事も気になっていた為言いたい事を飲み込んだ。
幸村の元へ駆け寄った彩芽を見て清正が三成に言った。
「俺達が見送った方がスッキリすんだろ?」
「……何の話だ」
「気持ち的に、だ」
「………フン」
清正の言わんとしている事は三成にもわかっていた。
彩芽と幸村を送り出す事で完全に気持ちにけじめを着けられる、そう言う事なのだ。
二日後の晴天の日、幸村と彩芽は上田へ向けて大坂を発つ事になった。