第22章 story21“一瞬先の未来へ”
「彩芽殿!」
「幸村、良かった!探していたの」
「私もです、上田へ出向く日取りを決めたいと思って」
「うん」
幸村を探して場内を回っていた彩芽と同様に幸村もまた彩芽を探していたようだった。
「早く上田へ参りたい気持ちもあるのですが…見送りの後の方が良いでしょう?」
「見送り…?」
「渡海の話聞いておりませんか?…三成殿も清正殿も朝鮮へ向かわれるのですよ」
「…あ!それでさっき秀吉様の元へ…っ!ごめんなさい幸村!ちょっと二人と話してくるっ」
「彩芽殿っ……」
幸村の呼び止める声にも止まらず、彩芽は再び城内を駆けて行ってしまった。
「はぁ………少し妬けるが…仕方ないか」
自分と話すよりも三成と清正を探しに行ってしまった愛しい人。
一人残された幸村は彩芽の背中を苦笑いで見送った。
「彩芽?」
「こんな所で何をしている」
「おねね様が、二人はまだ秀吉様の所だって…教えてくれて…」
先程清正とぶつかった廊下でしゃがみこんでいた彩芽。
「待っていたのか?」
コクンと小さく彩芽は頷く。
「清正と三成……遠くへ行っちゃうの…?」
渡海=遠く。
上田と大坂、それもごく一部しか知らない彩芽にとって海を渡ると言う事はもう二度と会えないのではないかと思えて仕方がなかった。
「…朝鮮へ行くだけだ、たかが隣国…距離などしれている」
「でも……」
三成はサラッとそう言いのけたが彩芽の顔からはまだ不安が滲み出ていた。
見兼ねた清正が口を挟む。
「さっき秀吉様に地図を見せてもらった」
「地図…?」
「この国と朝鮮との距離が分かった、図面の上ではこんなモンだ」
そう言うと清正は人差し指と親指で鉄砲の形を作り彩芽に見せた。
「この指の間位の距離だ、近いだろ?」
「本当に…?」
「お前は心配せずに上田で羽を伸ばしていれば良いのだよ」
「…秀吉様に聞いたの?」
彩芽の問いには応えず、三成は小さく微笑んだ。