第23章 戦国四重奏外伝 “同じ体温”
「女子がこんなに体を冷やしては毒ですよ」
「そんなに冷たい?」
確認するように幸村の手を握るとそこからじんわりと伝わってくる体温。
「…本当だ、幸村の方が温かい」
「…っ///」
急に押し黙ってしまった幸村の顔を見上げれば、口元を手で覆い赤くなった顔を必死に隠そうとする彼の姿があった。
それを見て彩芽も状況を瞬時に理解した。
ここは幸村の布団の中で。
体は密着してしまうほどに近くて。
「ご、ごめん…!///」
慌てて手を離そうとするもそれは叶わず、一瞬離れた手はすぐに幸村に捕まってしまった。
「このまま…眠りましょう」
「……う、うん//」
片手はしっかりと彩芽の手を握り、もう1つの手は頭に添えられそっと引き寄せられた。
引き寄せられた先は逞しい幸村の胸板。
遠慮がちに手を添えると甲冑を着けていない分、着物越しから直接体温が伝わってくる。
互いの心臓の音が聴こえてしまいそうな距離。
彩芽は恥ずかしくなってぎゅっと目を瞑った。
「彩芽殿も…温かくなってきましたね」
「…うん」
肌を触れ合わせている所から体温が同調していくのがわかる。
状況に少し慣れ、心臓の音が落ち着く頃には幸村と彩芽の体温に差はなくなってきていた。
返事をする彩芽の声にも眠気が交じっている。
腕の中でウトウトとする彩芽を幸村は愛おしそうに見つめた。
(心が満たされていくのがわかる…)
彩芽の頭にそっと自身の頭を寄り添わせ、幸村も目を閉じた。
(いっそ上田に帰らずこのまま…二人で日ノ本を巡ってみようか、なんて…)
そんな事さえ浮かんで来てしまう。
己の浅はかな考えに小さく笑みを溢し、幸村はすっかり眠ってしまった彩芽に囁いた。
「おやすみ、彩芽…」
そして小さな手を優しく握り直した。
終。
(20160122)