第22章 story21“一瞬先の未来へ”
小田原平定からしばらく、世の中も豊臣政権の中で落ち着きつつあった。
「い、暇を…ですか?」
「おう、そうじゃ!冬になれば信州、あそこは雪深いからのう…今の内に昌幸に幸村と二人で顔を見せてこいっ!」
秀吉に呼ばれた彩芽は突然の申し出に驚いて秀吉の顔を見つめた。
そしてすぐにまた頭を下げる。
「私なんかが暇など…!」
「えーってえーって!早くせんと冬になるぞ!ハッハッハッ!」
「秀吉様…ありがとうございます!」
豪快に笑うと秀吉は扇を開き自らをあおいだ。
「平穏は良い…実に良いのう!」
そう言ってまた笑うのだった。
この事を幸村に伝えるべく、彩芽は城内を駆け巡っていた。
(信州に…上田に行ける!幸村と…!)
廊下を曲がったら所で、大きな胸板にぶつかった。
「…っわぷ!」
「っと…何走ってんだお前は……」
「清正…っ!ごめんなさい…」
清正は跳ね返って転びそうになる彩芽をがっしりと支えた。
「どうせ考え事でもしていたのだろう…?」
「う…三成もいたの?」
「考え事は部屋に戻ってからにしろ、でなければまた何処かでぶつかるぞ」
「はい…」
しゅんとする彩芽を見兼ねてか、清正が三成に声を掛ける。
「三成、遅れるから行くぞ」
「あぁ」
「?…二人も秀吉様にお呼ばれなの?」
二人の行く先は先程まで自分が居た秀吉との謁見の間に続いている。
それを察した彩芽は清正と三成に尋ねた。
「あぁ…」
「彩芽、話は後だ、三成行くぞ」
「あ、ごめんなさい…引き止めちゃって」
謝る彩芽の肩をポンと叩いて清正と三成は秀吉の元へと向かった。