第21章 story20“君に捧ぐ愛の形”
「…口付けをする事、許して頂けますか」
「…………っ」
幸村の申し出に恥ずかしさはあったものの、彩芽はコクリと頷いた。
「彩芽」
「!」
名前を呼ばれ、顔を上げるやいなや幸村が彩芽の唇を塞いだ。
彩芽の知らない感覚だった。
頭から爪先まで甘く痺れるような、ずっと続いて欲しいと思ってしまうようなそんな感覚。
「んん…っ」
角度を変えては彩芽の唇を味わおうとする幸村に着いていくのがやっとだった。
うまく息継ぎが出来ず、彩芽は幸村の着物をぎゅっと掴んだ。
「…はぁっ」
「……すみません、苦しかったですか?」
漸く唇が離れた時には彩芽は肩で息をしていた。
そんな姿を見て幸村の中で更なる欲が湧き出てしまう。
そんな欲を抑え、幸村は彩芽に優しく笑い掛ける。
「これからは、自分の手で彩芽殿を守れる」
「……幸村」
「それがとても誇らしいです」
戦場で途方に暮れていただけの自分を守ることが、幸村は誇りだと言ってくれる。
戸の外から鳥の鳴き声が聞こえてきた。
「…そろそろ部屋へ戻った方がいい、送ります」
「…うん」
このままではいずれ誰かに見られ騒ぎになってしまうかもしれない。
名残惜しいけれどと、幸村は彩芽の頭を撫でて立ち上がった。
そして彩芽に手を差し伸べた。
そのまま手を繋いで彩芽の部屋まで歩く。
幸い誰にも会うことなく辿り着く事が出来た。
「…ありがとう、幸村」
「では…また後程」
幸村は静かにそう告げると元来た道を帰っていった。彩芽は幸村の背中を見送った後自室へ入るとペタリと座り込む。
(……私…っ、幸村と……!)
先程までの熱い口付けを思い出し一人赤面する。
でも恥ずかしいのに、幸福感に胸は満たされていた。
誰かと想い合う事がこんなにも幸せなものだったなんて知らなかった。