第21章 story20“君に捧ぐ愛の形”
「幸村、このまま大坂に残れ!わしにはまだお前の力が必要なんじゃ!」
「……はっ」
その日の午後、幸村は秀吉に呼び出されていた。
関東制圧の際の真田の働きを高く評価した秀吉は即座に幸村の父昌幸に申し出ていた。
そう遠くない未来に対徳川を見据え、昌幸はこれを承諾。
真田は正式に豊臣の配下になった。
幸村が大坂に残る。
彩芽にとっても嬉しい報せとなった。
「彩芽殿」
「あ、幸村」
洗濯物を取り込んでいた彩芽は幸村に気付くとかごを持って駆け寄った。
「さっき、おねね様に伺ったの…幸村がここに残るって…」
「はい、父上からも文が届きました」
「やっぱり幸村は凄いんだね…!秀吉様にも認められるなんて…」
彩芽は持っていたかごをぎゅっと抱き締める。
近くに居られて嬉しい筈なのに、どんどん前へ駆けていく幸村に少しだけ寂しさを感じてしまう。
自分はこんなに我儘だったろうか。
そんな彩芽の想いを汲み取ったのか、幸村は彩芽の頬を両手で包む。
「…っゆ、き…!////」
「私の居場所は…貴女の隣だけですから」
「…うん」
そのまま彩芽の耳元に口を寄せ、そっと囁く。
「…まだ不安ですか?」
「あっ…!そう言うわけじゃ…!」
「私が…どれだけ貴女を想って来たと思っているのですか」
「あ……///うん、…はい//」
これ以上何か言われたら頭から湯気が出てしまいそうだと彩芽は本気で思った。
真っ赤な顔の彩芽を見て満足そうに幸村は笑った。
当の彩芽はと言うと火照った顔をかごに隠し、冷まそうと必死になっていたのだった。