第21章 story20“君に捧ぐ愛の形”
どれくらいこうしているだろう。
抱き締められたまま、互いに何も言わない時間が続いていた。
微かに聞こえてくるのはどちらのものかも分からない速い心音。
先に沈黙に耐えきれなくなったのは彩芽の方だった。
「…ゆ、幸村…?///」
そっと名を呼んでみる。
すると応えるように幸村は抱き締める腕に力を込めた。
「幸村…///あの、私…っ」
「申し訳ありません、彩芽殿…もう少し、もう少しこのままで…」
「あ……//うん…」
抱き締めながら髪を撫でてくれる幸村の手が心地良い。
彩芽はそっと目を閉じた。
「…この手を離したらまた貴女が花弁のように何処かへ舞って行ってしまうそうで」
「幸村…」
「ここに貴女がいることがまだ信じられていないのです」
上田から彩芽が出て行ってしまった日の事を一日だって忘れた事はなかった。
あんな思いは、もう二度と。
(するものか…)
ずっと想っていた彩芽は誰でもない自分を選んでくれた。
それは自分の手で彩芽を守っていけると言う事。
「出会った時の事を…覚えていますか」
「出会った時の事…」
「父上の前で誓った約束、必ず守ります」
二人の目線が合う。
とても優しい目をしていた幸村を見て彩芽は涙が込み上げてきた。
「…幸村に撫でられるの好き」
「彩芽殿…」
「大丈夫って言ってくれたこと、すごく安心したの…優しく笑ってくれるのも、鍛練頑張り過ぎちゃう所も……好き」
昔と何も変わらない。
幸村は彩芽にとって太陽だった。