第19章 story18“気付いた気持ち、隠された心”
そこから更に二日後、三成達は大坂の地を踏んでいた。
門を潜り、馬を降りると既に半分泣きべそを掻いた彩芽がいた。
下唇を噛み、涙を堪えその手は着物の裾をぎゅうっと握りしめていた。
その姿に三成は駆け寄ろうとしてその足を止めた。
「幸村…」
彩芽は幸村の名を呼んだ。
聞こえるか聞こえないかのか細い声であったが、三成の隣に立つこの男には確かに届いたのだ。
「彩芽殿」
二、三歩歩み寄り、腕を広げて幸村は立つ。
その腕の中に彩芽は迷うことなく飛び込んだ。
「っく……ひっく…」
大粒の涙が頬を伝う。
「行くぞ左近…」
「…話さなくて宜しいので?」
「…秀吉様への報告が先だ」
幸村と彩芽の光景から目を背けるようにして三成はその場を離れた。
「損な性格ですねぇ…」
やれやれと頭を掻いて左近は三成の後を追う。
「…彩芽殿、真田幸村…只今戻りました」
「お帰りなさい…無事で本当に良かった」
「遅くなってすみません」
「あっ…!ごめんなさい…っ//私…はしたない…」
我に返り、身体を離そうとする彩芽の腰をより一層幸村は抱き寄せた。
「…こうしていると、昔を思い出します」
「ゆ、幸村…?」
「貴女は…戦の終わった私をいつもこうして出迎えてくれていた」
上田にいた頃を思い出しますと小さく囁くように幸村は伝えた。
羽織越しでもわかる幸村の体温。
彩芽は確かに幸村に男を感じていた。
胸の奥に小さく火が灯ったような気持ち。
それが、清正や三成を想う気持ちとは違うものだと言う事も。