第19章 story18“気付いた気持ち、隠された心”
「はっ!」
幸村は力強く手綱を引き、早く走れと馬を急かす。
早く顔が見たい。
泣いていないだろうか。
心配していないだろうか。
彩芽を想うと様々な事が頭を巡る。
(早く…会いたい)
「幸村…っ」
「…!三成殿!」
「要らぬ心配をかけた、すまぬ…」
「そんな事はありませぬ、さぁ大坂へ帰りましょう!」
立ち直った三成を見た幸村は左近へと目配せをして頷き合う。
左近の同意の合図を受けると幸村はまた真っ直ぐに前を見据えた。
大坂城ではねねが簡単な旅支度を済ませたところであった。
「おねね様…本当に行かれるのですか?」
「じっとしてても状況はわかんないままだからね!大丈夫!ねね忍法でひとっ飛びさ!」
忍城攻めの部隊を見つけに行ってくると言うねねを彩芽は心配そうに見つめる。
ねねはそんな彩芽の頭を撫でた。
「見つけたらすぐに戻るよ、あたしは忍だからねっ」
にこりと笑ったかと思うと木の葉が舞うが如し、ねねは姿を消した。
「おねね様…どうかお気を付けて…」
その翌日の事だった。
「みーつーなーりーっ!」
「あれは…」
三成の見上げた先には凧で大空を舞うねねの姿があった。
「皆ー無事だねー!?」
三成、左近、そして幸村の姿を確認したねねは安堵の笑顔を見せた。
そして大声で叫ぶ。
「早く戻るんだよー!皆待ってるからー!」
言いたいことだけ言うとねねは高度を上げて気流に乗り西へと流れていった。
「ははっ、本当に豊臣の奥方は…愉快ですねぇ」
「忍らしくして欲しい時もあるがな…」
笑っている左近を尻目に三成は盛大に溜め息をついた。