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戦国四重奏 (戦国無双3)

第19章 story18“気付いた気持ち、隠された心”


「三成…?いる…?」

「…あぁ」

戦の報告やその他の庶務で休む間もなく動き回っていた三成に彩芽が会えたのは既に夕刻時だった。

控え目に戸を開けると未だに机に向かう三成の姿があった。

「お帰りなさい…三成」

「あぁ…」

「怪我してない…?」

「あぁ」

「……そっか」

元々会話が弾む相手ではないが、一段と途切れてしまう会話に彩芽は戸惑ってしまう。

「無事に帰って来て良かった…」

ポツリと彩芽が呟いた。
その言葉に反応したかのように三成が振り向いた。

「…無事なものか」

「え?」

光を感じさせない三成の瞳。
彩芽は静かに息を飲んだ。

「…多くの兵を犠牲にした、俺の考えが甘かったのだ」

「三成…」

「誰も死なせぬと…お前に約束したのにな」

「そんなっ…」

言いかけて、やめる。
どんな言葉をかけるべきなのか、迷ったからだ。
すると、三成の方からその先の言葉を制止した。

「慰めようなどと思っているのなら余計なお世話なのだよ、俺は落ち込んでいるほど暇ではない」

「……うん」

「秀吉様の天下となった今、どう統率していくかは俺の仕事になるからな…これから更に忙しくなる」

「そうだね」

三成の瞳に光が戻った。
常に前を見ているその様子はまさに秀吉の右腕と呼ばれるに値する。

「お前に構ってる暇もなくなりそうだ」

「三成…?」

「大体、夜分に気のない男の部屋に一人で来るな…幸村を悲しませたいのか?」

「ななな…なんで幸村っ////」

顔を真っ赤にして動揺する彩芽を三成は優しく見つめる。

「奴が…好きなのだろう?」

三成の問いに少し時間を置いてから彩芽は小さく頷いた。

「…ならば、もう見失うな」

「…うん!」

ハッキリと返事をした彩芽は立ち上がり三成の部屋を後にした。


「…全く本当に損な性格ですねぇ」

「…盗み聞きをするな左近、悪趣味だろう」

「これで良いんですか?殿」

「女に時間を掛けるほど暇ではないのだよ、これで…良いのだ」

「…そうですかい」




こうして秀吉の関東制圧が終わると共に、一つの恋が始まる前に終わりを告げた。




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