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戦国四重奏 (戦国無双3)

第18章 story17“藤棚の祈り”


誰かを失う怖さ、二度と会えない悲しみ。
兄を失った時の画が頭を過った。

その夜は眠れぬ夜を過ごした。

大阪城内では秀吉の天下統一の祝賀一色で盛り上がっていたが、彩芽は藤棚の前から動かず祈り続けていた。

(無事に…戻って……)

「……彩芽」

「……き、よまさ?」

呼ばれて振り返ると正に今大阪へ辿り着いた清正の姿があった。

「…加藤清正、只今帰還」

「…っ!!」

涙を目に溜めて彩芽はゆっくりと清正に歩み寄る。
そんな様子を見て清正は小さく微笑んだ。
戦から戻ったばかりなので抱き締めたい気持ちを抑え、そっと彩芽の頭を撫でた。

「…おかえりなさい」

「…おう」

晴れ切らない彩芽の顔を見て清正が尋ねた。

「…忍城の件、お前の耳にも入ってるのか」

「………被害が出てるって、聞いたの」

「…安心しろ、三成も幸村も無事だ」

「ほ、んとに…?」

「あぁ…」

清正の言葉を聞いて、我慢していた涙が溢れ出す。
誰を想って泣いているのか、複雑な思いが清正の胸を駆ける。


「彩芽」

「?」

涙を拭いながら清正の顔を見上げる。

「帰ったら話があるって言ったろう」

「…うん?」

風が藤の花と葉を揺らす。

その揺れる音が止むのを待ち、清正はゆっくりと且つはっきりと彩芽を見つめて言った。



「彩芽、
俺は…初めて上田で会ったあの日からお前が好きだ」


風が止んだ宙に生まれた清正の言葉は真っ直ぐ彩芽へと届いた。


「清正…が、私を……?」

「お前の心に誰がいるのかはわからないが、俺の心にはお前がいる」

「……///」

清正の強い眼差しに顔が赤くなるのを感じた。

「答えがはっきり出たら…教えてくれ」

「……清正」

「風邪引かねぇ内に中に戻れよ…」

そう言い残すと清正は一足先に城内へと戻って行った。




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