第16章 story15“戦に私情、挟むべからず”
「三成?彩芽です、開けていい?」
「あぁ」
短い返事の後戸が開き、三成が彩芽を招き入れた。
「話って…なぁに?」
「膝を貸せ」
「…へ?」
「膝」
「えぇっ!///恥ずかしいよ…」
いつぞやに膝枕をしたまま三成が眠ってしまった事を思い出した彩芽は思いきり赤面する。
「いいから貸せ」
「……横暴」
三成の意思が曲げられない事を悟ると彩芽は腰を下ろした。
三成は彩芽の膝にすかさず頭を乗せる。
そして大きな溜め息を吐いた。
「…疲れてるね」
「まぁ、頭を使っているからな…」
三成は静かに瞳を閉じた。
(睫毛、長いなぁ……)
まじまじと三成の顔を見つめると改めてどれだけ顔が整っているかが分かる。
「そんなに見るな、穴が空くだろう」
「……空かないよ」
「例えだ」
「…………話って…?」
漸く本題を切り出す。
疲れているにせよ、今日の三成は変だ。
悪態をついていてもどこか弱々しい。
「……じきに幸村が此処へ、大坂へ来る」
「…!!」
この事を彩芽に言おうか言うまいか悩んだが、三成は伝えることしにた。
少し怖いが、聞いた彩芽の反応を知りたかったのだ。
「共に戦う事になったのだよ…」
「幸村が、大坂に…?」
言葉にして事実を噛み締めると彩芽の顔は見る見る内に赤くなる。
「………」
(女の、顔をしている……)
幸村の名にここまで顔を赤くするのか。
彩芽はもう、幸村を男として見ている揺るがない証拠だった。
「彩芽」
「え…?っひゃ……!!」
彩芽の着物の襟を掴み、体を反転させ彩芽を組み敷く体勢をとった。
「な…なに?三成…どうしたの?」
慌てる彩芽を三成は見下ろして言った。
「随分と女の顔をするんだな、そんなに…幸村に会いたいか……?」
「……っ!」
三成の言葉に鼓動が早くなる。