第15章 Story14“星空の下の決意”
お酒も少なくなり、宴会も後半戦に差し掛かってきた。
「誰かー!酒が足りんぞー!」
上機嫌な秀吉が大声で叫ぶ。
「あ、私取ってきます」
「 彩芽は座ってていいんだよ?」
「でも…やっぱり皆忙しそうだし、行ってきますね」
「…ありがとね」
「いいえ」
ねねに微笑み、 彩芽は立ち上がり部屋を出た。
酒蔵から酒を見繕うと足早に広間へ戻る。
その帰りの廊下でふと顔を上げた。
「…わぁ」
晴れた夜空に幾万の星が光る。
雲の切れ間からは月も顔を出していた。
(何日振りだろう…)
考えてばかりの日々で空を見上げることも忘れていたような気がする。
足を止めて彩芽はしばし空を眺めていた。
「……兄上、どうか皆を守ってね」
祈るように目を閉じた。
「彩芽?」
「清正」
「中々帰って来ねぇから…」
「ごめんね、星を見てたら戻るの忘れちゃった」
彩芽は夜空を指差した。
笑ってはいるものの、清正にはまだ彩芽が寂しげに見えていた。
「…少し、飲むか」
「え?これ?これは秀吉様に……」
「いいから、座れ」
「でも…」
「座れ」
聞く耳を持たない清正に観念したのか、彩芽は大人しく清正の隣に腰かける。
懐から器を出し、酒を注ぐ。
「…戦は嫌いか?」
彩芽に器を手渡しながら清正が言う。
「……うん、怖いから嫌」
一口、コクリと酒を口に含む。
少し辛い風味が口に広がった。
誰かを失う辛さはもうあの時だけで十分だった。
思いを流し込むように残りの酒を喉に流し込む。
「彩芽…」
「清正、ここに…帰ってきてね」
「っ…!」
儚げに笑う彩芽を思い切り抱き締める。
ふんわりと薫る香と酒の匂い。
細く柔らかな体は力を入れれば壊れてしまうのではないか、そんな気さえした。
「き、よまさ…」
「戦を終わらせるための戦をしてくる」
「終わらせるための戦…?」
「お前が笑っていられる世にしてみせる」
絶対だ、と最後に付け加えて清正はしっかりと彩芽を見つめた。