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戦国四重奏 (戦国無双3)

第14章 story13“せせらぎと心音”


「…幸村、ホントにもう上田に帰っちゃうの……?」

ちゃぷりと手で小川の水をすくいながら 彩芽は幸村に尋ねた。

「……… 彩芽殿」

「ごめんなさい…困らせたいわけじゃないの……!」

話を無理矢理切り替えるように 彩芽は笑顔を作り幸村の方を向く。

「そうだ、これ…幸村にずっと借りてた羽織!」

小さな風呂敷包の中から 彩芽は出会った時にかけてもらった幸村の陣羽織を見せた。

「これは…」

明らかに今の自分では着る事の出来ない小さめの羽織。
受け取り、眺めているうちに幸村は羽織の事を思い出した。

「勝手に大坂にまで持ってきちゃってごめんなさい…」

自分の羽織を、大坂にまで持ってきていた。

彩芽は謝っているが、幸村は寧ろ嬉しく感じていた。
それは大坂と上田、離れていた時間さえも埋めてくれたように思えるのだった。

愛しい。
以前よりもその気持ちは幸村の中で更に強くなっていた。

「彩芽殿、某の話を聞いてくれますか?」

「?…うん」

太陽の光で水面が光る。

「…今は乱世、離れた二人が再び会える保証などどこにもない」

「…幸村」

ゆっくりと 近付き、幸村はそっと 彩芽の手を取った。
小さな手を包むのは幸村にはとても容易い事だった。




「だから、私の気持ちを伝えさせて下さい」




本当は上田で伝える筈だった想い。






「…父には、真田のためにより強力な家との婚儀をと…言われています」

「婚儀…」

幸村の口から出たその言葉に 彩芽の胸はドキリと鳴る。

「ですが…某は自分の力で真田を大きくしたい、共に生きる伴侶も自分が本気で想える方が良いのです」

「幸村…」

「このような考えは甘いのかも知れません…」

「そんな事っ…!」


彩芽が言いかけた時、幸村は
彩芽の腕を引き、強く抱き締めた。






「それでも、某は貴女が好きです」









「…!」

「また、会えたら…是非返事を聞かせて下さい」

「ゆ、き…むら……」


聞こえるのは小川のせせらぎと、互いの心臓の音。








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