第13章 戦国四重奏外伝 “噂のあの娘”
それから半刻、二人の状態は変わらず今に至る。
「…あれま」
戸の隙間から二人の様子を覗くねねと利家。
「こりゃあ、驚いた…あの偏屈がなついてるじゃねぇか」
「ふふ…邪魔しない方が良さそうだねぇ、
彩芽と話すのはまた後にしよう」
ねねと利家はそっとその場を後にした。
その日は秀吉の誘いで利家は城に泊まる事になり、夜は宴会を行う流れになった。
三成への膝枕はあれから更に半刻続き、 彩芽の足の痺れが限界に達した所で解放された。
正午を過ぎた頃、夜の宴会に向けて必要な食材を 彩芽は買いに行くことになった。
門の所で買いに行くものの内容を確認する 彩芽の姿に利家は気が付いた。
「ありゃあ…さっきの別嬪さんじゃねぇか…ん?清正?」
清正の姿を見つけた利家は近付こうとした足を一旦止めた。
「彩芽っ!」
「清正」
「おい、まさか…一人で出掛ける気か?」
「うん、買い出しを頼まれたから行ってくるね」
彩芽の返答を聞いた清正は大きな溜め息を付いた。
「皆宴会の支度に追われてて、買い出し行ける人が私しかいなくて」
「はぁ…馬鹿、一人で行って何かあったらどうする」
でも…と言葉を続けようとする 彩芽を止め、清正は真っ直ぐに 彩芽を見つめて言った。
「俺も行く」
「清正…?!」
「…なんだよ、構わないだろ?それに…」
心配なんだよ…と、彩芽の肩に頭を乗せながら小さく呟いた。
「…///清正」
そんな二人の様子を遠くから見ていたら利家はやれやれと肩を竦めた。
「あの清正も惚れてんのかよ」
そのまま 彩芽に声を掛けることなく、利家は二人を見送った。