第13章 戦国四重奏外伝 “噂のあの娘”
夜、
利家の為のささやかな宴会が開かれた。
「利家様、ご挨拶が遅くなって申し訳ありません…秀吉様のお世話になっております 彩芽と申します」
利家にお酒を注いだ後、 彩芽はぺこりと頭を下げた。
「前田利家だ!よろしくな」
利家は 彩芽の頭にポンと手を乗せた。
にこりと笑う 彩芽に一瞬目を奪われ、胸が鳴る。
「……//」(確かに…可愛い……//ん?)
彩芽に見惚れていると強い視線を感じた。
周りを見るとすぐにその視線の主が判明する。
「…………」(あ、あいつ等…)
清正と三成が酒を呑む事も忘れこちらをじっと見ていたのだった。
「… 彩芽、ちゃん」
「はい」
「秀吉の猪口も空いてるみたいだぜ?」
「あ!すみません!では、失礼致しますね」
「あぁ… 番犬も睨んでることだしな」
「?」
利家の言葉の意味はわからなかったが、 彩芽は深く追及する事なく秀吉の元へと向かった。
「 彩芽!お前も座って食え食え!」
大笑いしながらそう言う秀吉はとても上機嫌で、ねねに呑み過ぎだとつつかれても全く気にしていない様子だった。
「ふふっ…秀吉様楽しそう」
彩芽は自分の席に戻りながら秀吉を見て微笑む。
席はもちろん三成と清正の間だった。
「 彩芽」
「三成」
「早く食わねば冷めてしまうぞ」
「うん」
「…大体お前は、誰にでも笑い掛けすぎなのだよ」
「えぇ?」
ムスッとしながら三成は煮物を口に入れた。
「危機感ってモンが足りねぇんだよ… 彩芽は…」
「もう…清正まで…」
彩芽はぷぅっと膨れ、お新香のきゅうりを食べた。
「うわっ!!美味しいっ!」
怒っていたかと思いきや突然笑い出す。
「三成も清正も食べた?!このきゅうり、絶品っ!」
「「………///」」
目が離せなくて、困る。
「ねぇ二人とも顔が赤いけど…酔ってるの?お水持ってこようか?」
「「…酔ってない」」
そんな三人の様子を秀吉と利家とねねは微笑ましく見つめていた。
「いやー、若いってのはいいのぅ!」
「全くだ」
「ふふっ!そうだねお前様♪」
大阪城の賑やかな夜はゆっくりと過ぎていく。
様々な想いが入り交じる、なんて愉快な夜。