第13章 戦国四重奏外伝 “噂のあの娘”
大阪城に幸村が到着する少し前のとある日の話。
「おう!秀吉!!相変わらずだな!」
「おー!よく来たなぁ!利家っ!」
近くまで来たからと、秀吉の旧友である前田利家が大阪城を訪れていた。
「秀吉、えらい別嬪の側室迎えたって話じゃねぇか!今日は顔見に寄ったんだ、呼んでくれよ」
「別嬪の側室?」
「お前様……?」
きょとんとしている秀吉の後ろでねねが鬼の形相で秀吉を睨み付けている。
「ごっ誤解じゃ!ねね…!」
「なんでぇ、違うのか?」
「お前様、利家の話の娘って…まさか 彩芽の事なんじゃないのかい?」
あぁ!と納得したように秀吉は手を叩いた。
「 彩芽なら今は三成にお茶を持っていくように頼んだばかりだから…三成んとこだね!利家、あたしが案内するよ」
「おう、すまねぇな!」
ねねは案内をしながら利家に 彩芽は真田から預かった娘だとしっかりと伝えた。
「そ、そうか…側室と間違えて悪かったな…はは…」
ねねの笑顔からただならぬ空気を感じ取った利家は苦笑いを浮かべた。
その頃、三成の自室では すっかり困り果てた 彩芽が唸っていた。
「うーん…どうしよう……」
執務中の三成にお茶を届けに来て無事に机に置いたまでは良かったのだが。
「眠い」
「あ、昨夜は遅くまで仕事していたの…?」
「いや、一睡もしていない」
「えぇ?!」
三成は驚いた彩芽の膝の上にドサリと頭を乗せた。
「三成?布団、出そうか?」
「………いや、このまま少し眠る」
部屋に二人きり、そんな中で布団など敷かれたら…自分を抑える自信がない。
邪な己の考えを振り払うように小さく首を振り、三成は瞳を閉じた。
「寝るなら布団の方がちゃんと寝られるのに…」
彩芽のそんな呟きも届く事なく、三成は静かに寝息を立て始めた。