第11章 story11“夢幻の藤”
「随分大きく出たものだな」
「……三成殿」
幸村の向かい、彩芽を挟むようにして三成が座る。
彩芽の顔を見つめ、そっと頬に手を当てる。
じんわりと感じる彩芽を体温に三成は目を細め、手を離す。
「時折…どこか遠くを想う顔をしていた」
上田の藤を見せたいと言っていた彩芽。
あの時思い出していたのは上田の藤の事だけではなかったのだな。
「清正、そこにいるか?」
「………」
「清正、幸村…俺は彩芽を守りたい」
「三成…殿……」
「幸村、お前と同じように」
三成の言葉を聞いて清正も部屋に入る。
「清正、お前もそうなのだろう?」
「……俺は」
この気持ちは…三成のように純粋なものではないかもしれない。
誰にも渡したくないと思ってしまうほど、自分以外に微笑んで欲しくないと思ってしまうほどだった。
「彩芽殿を守るのは…某です」
その場の空気を断ち切るように幸村が言った。
「「………」」
清正も三成も静かに幸村を見つめた。
黙ってはいるものの、部屋の空気は一層張りつめたものになっていた。
「大の男が三人揃って何を難しい顔してるんだい!」
「…おねね様!」
「そんな事じゃ…彩芽も起きるに起きれないじゃないかっ」
ねねの一言が部屋に響き渡る。
三人はハッとしたように顔をあげ彩芽を見つめた。