第9章 story9“大阪夏祭り”
「震えてんのか?へへ…可愛いねェ」
「おい」
ふいに聞き覚えのある声が聞こえて彩芽は目を開けて顔を上げる。
「んー……っ!」
知った顔が見えると彩芽は再び体に力を入れてもがきだす。
口を押さえていた男の手を剥がすと思いきり叫んだ。
「き…清正っ!!」
「誰だ、てめぇ!邪魔すんじゃねぇ!」
怒鳴り散らす男に対し清正は冷たく言い放つ。
「その汚ねぇ手を離せ、そいつに…触るな」
「何だと!!……うっ!」
男に喋る間も与えず清正の拳が男の顔面に入る。
男が彩芽を放したのを見て清正はすぐに彩芽を引き寄せた。
「やるってんなら相手になるが…どうする」
「ひ…っ!」
男は殴られた頬を押さえながら後ずさりをする。
「おい、立て…!行くぞ!!」
もう一人の男も慌てたようにその場を立ち去る。
男達がいなくなり、彩芽はようやく安堵の表情を見せた。
「大丈夫か?」
「うん…ありがとう、清正…」
「勝手に離れるからだ、ほら」
そう言って清正は手を差し出す。
「え…?」
「…ほら、早くしろ」
「うんっ!」
少し照れた様に差し出された手に彩芽はしっかりと掴まった。
その頃、幸村とくのいちも城下町に来て祭りの様子を見ていた。
「うわぁー、すっごい人!賑わってますねぇー♪」
「確かにこの賑わいは上田では見られぬな…」
「美味しいものありますかねーっと…幸村様あそこのお店見てきます!」
子どもの様に目を輝かせたくのいちは目的の干菓子屋へと駆け出す。
干菓子屋に辿り着いたその時、
「きゃっ…」
「あっ…!ごめんなさいっ!!大丈夫ですか?!」
走っていたくのいちは向かいから歩いてきた女にぶつかってしまった。
「はい…大丈夫です」
立ち上がり砂を払う。
くのいちがぶつかってしまったのは彩芽だった。
「次は気を付けます…ホントにすいません」
「気にしないでいいですよ、私は大丈夫だから」
ニコリと微笑む彩芽にくのいちも思わず笑顔を溢す。
「じゃあ私たちはこれで…」
「あ、ハイ」
二人は軽く会釈をして別れた。