第1章 story 1 “戦場に咲く一輪の華”
丸1日半馬を走らせ、真田の一行は無事に上田城へ帰還した。
「昌幸様!お帰りなさいませ!!」
大勢の家臣や女中に迎えられ、幸村も馬を降り、抱きかかえるようにして彩芽も馬から降ろした。
「幸村様、こちらは………?」
「戦場で…縁あって上田に住まう事になりました、部屋の用意を」
「はっ!」
家臣にそう言い付けると幸村は彩芽に笑いかけた。
「長い間馬に揺られてお疲れでしょう、部屋の支度が出来るまで私の部屋で休んで下さい」
「はい…」
そう返事をして彩芽は一歩踏み出すと、くらりと足がふらついてしまった。
それを咄嗟に幸村が支える。
「彩芽殿っ…無理はしないで下さい!」
幸村は彩芽をふわりと抱きかかえた。
「幸村様!我々がお連れ致します!」
「幸村様もお疲れでは…!」
家臣達が慌てて駆け寄るが幸村はそれを断った。
「彩芽殿は私がお連れします、大丈夫ですよ」
そう言って彩芽を抱えたまま、幸村は部屋へと向かった。
「皆、良い人達ばかりです。彩芽殿もすぐに上田に慣れますよ」
部屋の前に着くと幸村はそっと彩芽を降ろした。
「…幸村、さま………あの、ありがとうございます…」
「……!!」
「私、もう……あのまま兄と共に死のうと思ってました、でも幸村様に拾われて……まだ生きたいと願ってしまった」
一度話し出した彩芽は止まることなく続けた。
「幸村様…守ると、言って下さったこと……嬉しかったです」
ふわりと初めて笑った彩芽に幸村の胸はきゅっと締め付けられた。
そして、次の瞬間には胸が高鳴る感覚。
笑った彩芽から、目が離せない。