第7章 六章「桜舞う樹の下でも、いつもどおり」
「ケーキも手作りだ!」
「剛が適当に生クリーム塗るからかっこわるくなっちゃったんだけどねー」
「お前の苺の載せ方もかっこ悪いだろー!」
「ううん、すごく嬉しいよ。美味しいし!」
「いい子に育ってくれたねぇ…」
「おばあちゃんか」
みんなが片付けをしてくれている間、私は猫と遊んでいた。元々人懐っこいのか、既に私の傍に寄ってくる。
可愛すぎて鼻血出そう。
「名前どうするの?」
「うーん…ぶいちゃん、かなぁ」
「お、V6のぶいちゃん?」
「そうそう。安易かな?」
「いや、可愛いんじゃない?よろしくね、ぶいー」
「みゃ」
博君が指をくるくる目の前で回すと、ぶいはたしたし、と小さな手でそれを追いかける。
と、いうわけで、ぶいは約一ヶ月ほど前から、私達の家族になったのだ。
「ぶい、ドア閉めるよー」
「みゃ」
私にトコトコとついてくる。
今日はV6揃っての仕事の日で、帰ってくるのは八時頃らしいので、それまでに夕飯を作ろうとキッチンに立つ。
テレビでは、桜シーズンのニュースが流れている。
「もう四月だもんねぇ。桜も綺麗に咲いてる頃だねぇ」
「にゃ」
独り言なのか、ぶいに言ったのかは自分でもわからないのだが、ぶいがそう返事をしてくれた。
桜の咲く道を散歩したら、気持ちがいいかもしれない。
そう、私がなんとなく思っていたその日の夜、まーくんが提案をした。
「花見にでも行かないか?」
「おお!いいねー!」
「さんせー!」
みんな乗り気で、手を挙げる。
ぶいも、賛成と言わんばかりににゃ、と短く鳴いた。
「じゃあ私お弁当作るよ」
「とびっきり豪華なやつね!」
「はいはい」
そんな感じで、翌々日に花見が決行される事となった。
翌日、花見の弁当の材料を買うため、私はスーパーにいた。精肉のコーナーにいると、後ろからぽんぽん、と肩を叩かれる。
振り向くと、そこには笑顔の女性が立っていた。
「ねぇ、鍋にするなら、こっちのお肉とこっちのお肉、どっちがおすすめ?」
初対面で、しかも初の会話がそれか、と一瞬訝ったが、特に悪い人ではなさそうなので、私は右側の肉を指さした。
「これがいいんじゃないかな。出汁も出るし」
「そっか!ありがとう!あなた、主婦さん?」
「いや、俺男だし」
いかなる相手にも、私は男だという設定は忘れない。