第7章 六章「桜舞う樹の下でも、いつもどおり」
太陽が落ちかけ、周りも薄暗くなったところで、楽しいお花見はお開きとなった。
私はやる事を済ませ、少し冷えた体を温めようと、風呂に入る事にした。
湯船に浸かり、のんびり鼻歌などを嗜みながら、優雅なバスタイムを過ごす。
…すると。
「あー寒い!」
「……」
「……」
剛と目が合った。
「……ら、ラッキー……」
「それだけでいい?言い残す言葉は」
「ごめんなさぶっ」
カコーンといい音を立て、洗面器が剛の顔面にヒットした。すると、何事か、と残りのメンバーも現れた。
「どうした!?」
「剛がお風呂入ってきたの!!」
「なっ…剛!!」
「違うって!事故だよ事故!嬉しいハプニングだよ!!」
「嬉しいのはお前だけだ!」
「そうだぞ!泉は急に裸見られてなぁ…ん?裸…?」
「……」
またしても訪れる静寂。
みんなの視線は私の体に集中している。
私も思わず自分が一糸まとっていない事を忘れ、自分の体とみんなを交互に見た。
「い…い……」
「泉、落ち着いて、ねっ?」
「大丈夫!見てない!見てないから!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その後、みんなは私に思い切りシャワーのお湯をかけられ、ずぶ濡れになってしまったのだった。
夜、さっきの件が落ち着いてきた頃、私は何故か准君の膝の上にいる。
離してくれないのだ。
「もー。離してよ。そろそろ寝たいんだけど」
「一緒に寝よ?」
「寝ない」
笑顔で答える。
「そういえば、今日のお花見さ、王様になったのもすごいけど、よく私の番号指名できたね」
「ん?まーなー」
「…なにか裏があったりして?」
「ははは。そんなんあらへんよ。俺は運がええだけやで。別にあの番号以外に印をつけたとかやない…はっ」
「イカサマじゃん!」
「だって、泉に愛してるって言われたかったんやもん」
「…むぅ」
「な、泉」
「ん?」
「愛してる」
真っ直ぐ真顔でこんな整った顔の男に言われたら、赤面するなという方が無理だ。
私はふい、と顔を背け、准君の上から降りた。
「照れとるー」
「うううう、うっさい!!お、おやすみ!」
「うん、おやすみな」
軽い触れるだけのキスをし、頭を撫でられ、私は部屋へ戻った。
まぁ、色々不本意だったが、楽しい花見ではあったな。とベッドの中で私は笑った。
六章 完