第7章 六章「桜舞う樹の下でも、いつもどおり」
七時を周り、いい匂いがしてくると、リビングからまーくんの呼ぶ声がしたので、私は本を閉じてリビングに入った。
「わー!美味しそう!」
「そうでしょー?」
「これ、俺作ったの!」
オードブルや、チーズフォンデュ、チキンのソテーなどがテーブルいっぱいに並んでいる。
どれもこれも本当に美味しそうだ。
「よし、みんなグラス持ったか?」
「うん!」
「泉、誕生日おめでとう!!」
「おめでとうー!」
「みんなありがとうー!」
どの料理もとても美味しい。
誕生日をこんな風に祝ってもらったのは初めてだ。ここにみんなで住み始めてから、私が経験していない、ほかの人が当たり前に経験する事を経験出来て、とても嬉しい。
ほぼ料理をたいらげると、急に部屋が真っ暗になった。
「なに?停電?」
「ハッピバースデートゥーユー」
定番の歌が聞こえ、ロウソクの灯りが少しだけ部屋を照らす。
それは、少しだけ形が歪なケーキだ。きちんと私の歳の数字のロウソクが立っている。
「はい、フーってして!」
「う、うん。…フーッ」
ロウソクの火が消え、また訪れた暗闇の中で、六人の拍手が響いた。
「こういうのってお願い事しながら消すってのが定番だよね!」
「泉ちゃんはなにかお願いした?」
「パパが一日だけでも嘘をつきませんように…って」
「ジム・キャリーか!」
「ライアーライアーか!」
わかる人にしかわからないボケにツッコんでくれてありがとう。
「さて!ではではお待ちかねの…」
「プレゼントターイム!」
「そんな、プレゼントなんていいのに…」
そっとイノッチの手から、箱が渡された。
なにか中で動いている気がする。
「な、なんかゲテモノとかじゃないよね…?」
「いいからいいから、そっと開けてみて」
「うん。…え、うそっ」
そう。大きめの箱の蓋を開けると、ぴょこっと小さな顔が出てきた。それは、子猫だ。
私を見て、大きい人間がたくさんいて怖がっているのか、興味があるのか、みゃーみゃーと可愛らしい声で鳴いている。
「健から聞いたんだ。泉が猫欲しがってるって。俺たち家を開ける事が多いから、その子で少しでも寂しさが和らぐといいかなって思ってみんなで買ったんだよ」
「みんな、ありがとう!本当に嬉しい!」
既に子猫は私の胸にしがみつき、まったりしている。