第6章 五章「手作りチョコレートと言い張るなら、カカオから」
健ちゃんはにこーっと笑い、その笑顔に反するような激しいキスをしてきた。舌を吸われ、だんだん恥ずかしさから快楽が生まれてくる。
「けんちゃ……」
「その反応すっごい好き」
「知らないっ…」
「舌出して?」
舌を少し出すと、甘噛みされる。
ピクピクと反応する私を可愛い笑みで見つめながら、胸に手を置いてきたので、私は初めて抵抗した。
「むー」
「それはだめって約束」
「むむむー」
「…みんなそんなにしたいの?」
「したいよ。俺は。全部俺のものにしたい」
「へぇ」
「淡白!!!」
健ちゃんが盛ってくるのをなんとかかわした私は部屋に戻る。すると、コンコン、とノックが響いた。
「はーい?」
「俺!俺だよ俺!!百万振り込んでくれよ!!」
とりあえず無視する事に決めた。
「なんか言えやぁぁぁ!!!」
「うるっさいな。なに」
剛が豪快にドアを開きながら叫んでくるので、耳を塞ぎながら私はそれを睨んだ。
「辞書。借りてたから返しに来た」
「おー。ありがと」
「……」
「なによ?」
剛は、黙り込んだかと思えば突然私の頭をぽん、と叩いた。
「本当素直じゃねぇよなー」
「な、なにが?」
「昔っからそうだよな、お前。寂しいのに寂しいって言わねぇんだもん。強がって、馬鹿みてぇにへらへら笑って」
「馬鹿みたいにへらへらしてるのは君だ」
「そうでした。…いや、だからぁ。もっと言いたい事言えよ。わがままでも、なんでも言え!」
「…うん…でも、私さ、今幸せだよ?みんなといられて。それで更にわがままなんて言えないよ」
「いいんだよ。みんなお前のわがまま聞きたいと思ってるんだから」
「そうなの?」
「少なくとも俺はな」
ぽんぽん、と軽快なリズムで私の頭を叩きながら、剛は照れくさそうにそう言う。
そうか、私はもっと甘えてもいいのか。
「…努力する」
「約束な」
「うん。約束」
「じゃあ約束の印になにしてくれる?」
「へ?…んー…じゃあ」
剛の唇に小さく口付ける。
「これでいい?」
「だめです。…このくらいしてもらわないと」
「んっ…!!」
頭を押され、強く唇を重ね合う。
逃げようとしても、逃がしてくれない。それは長く長く感じた。
「…よし」
「よし、じゃないよ。もう。口べとべと…」
「…舐めとってやろうか?」
「うん、逆効果だね」