第6章 五章「手作りチョコレートと言い張るなら、カカオから」
泣く泣く頼んでくる剛にも仕方なくパイを与え、小さなお茶会は終了した。
六人は旅の疲れか各々の部屋で休んでいる。
私も自室で仕事の資料整理をしていたのだが、携帯電話がイノッチからのメールの受信を報せた。
「あなたに会いたくて会いたくて震えてます」
「それは風邪です」
「はい、すみません。部屋に来てー」
言われるままイノッチの部屋に行くと、イノッチは薔薇を咥え、ベッドに片足を乗せてかっこつけている。私はそっとドアを閉じた。
「ちょ、待って待って!!」
「ごめん、部屋間違えたごめん」
「間違えてない!間違えてないです!」
イノッチに引きずられ、私は彼の部屋に入った。
すると、イノッチがベッドに座り、自分の腿をとんとん、と叩いている。どうやら上に座れという事らしい。
「なぁに?」
後ろから抱きしめられ、イノッチの匂いが私を包む。
「これ、お土産」
「わー。開けていい?」
「うん!」
袋の中から出てきたのは、可愛いブレスレットだった。
「可愛い!いいの?」
「いいよ。泉に買ってきたんだもん」
「ありがとう。大事にするね」
「そうして。…ねー」
「んー?」
「俺らがいなくて寂しいって、泣いてくれたじゃん?」
「う…その話はあまりしないでよ……」
「……俺もめっちゃ寂しかった」
イノッチは小声でそう言うと、抱きしめる腕に力を込めた。ドキドキして心臓の音が聞こえてしまいそうだ。
そのまま私の顔を自分の方に向け、軽くキスをしてくる。何度も、何度も。
「…へへ」
「…ありがと」
「うん。じゃ、俺ちょっと寝るから、夕飯できたら起こしてねー」
「はいはい」
そう言って私はイノッチの部屋を出る。すると。
「うわぁっ」
「泉ゲットー!!」
「ちょっと健ちゃん!下ろしてよー!!」
いきなり健ちゃんに抱き抱えられ、拉致された。
「俺も泉に会いたかったんだからぁ!」
「普通に歩けばいいでしょ!!」
「いや、泉歩くのめんどくさいかなぁって思って」
「思わねぇよ!?どんだけ横着者なの私!!」
結局健ちゃんの部屋まで連れて行かれ、やや乱暴にベッドに下ろされた。起き上がろうとするが、すぐに健ちゃんが上から押さえつけてくる。
「な、なに?」
「んー?泉分を補給しようかなって」
「そんな事しなくていい」
「やだ、する」