第6章 五章「手作りチョコレートと言い張るなら、カカオから」
「よし」
私は気合を入れると、材料と向き合い、レシピを思い出しながら、チョコレートパイを作り始めた。
あいつらを思いながら作業をすると、不思議と寂しさがどこかに消えてくれるようだ。
一時間後、無事にパイが出来る。なかなかの出来だ…と思いたい。
私は翌日彼らが帰ってくるのを心待ちにしながら、その日は早めに就寝したのだった。
夢を見た。
幼い頃の夢だ。
私は孤児院でも一人だった。
孤児院を出ても、一人だった。
ずっとずっと、一人だった。
「…」
起きた私は夢の内容を覚えてはいなかったが、何故だか涙が止まらない。心が締め付けられような痛みだった。
「…っ…」
「泉!?」
「へっ?」
起きると、私の部屋に六人がいた。
「なっ、なんでいるの!?」
「そこに泉がいたから…かな」
「そういうのはいいです」
イノッチの説明によると、どうやらみんなは早朝に向こうを出て帰ってきてくれたらしい。
こういうのは非常に照れるが、早く私に会いたいと思ってくれていたようだ。
「おか…えり…」
「あー、また泣く。どうしたのー」
「ごめ…なんか…みんながいないの…寂しくてっ…」
本音だ。
私はいつしかこの六人といるのが日常になっていて、楽しくて、鬱陶しくて、心地よくて。だから、きっともうこの温かさを知ってしまった私は、一人が耐えられないのだ。
「もー。だから一緒に行く?って聞いたのにー」
「ほら。もうずっと一緒だから。泣くな」
「せやで。もう一人にせーへんから」
「うー…私わがままだぁ…」
「そんな事ないって!」
「嬉しいよ、泉ちゃんが俺たちを必要としてくれて」
「あり…がと…」
「なーなー泉」
「ん?」
剛の呼びかけに顔を上げ、その光景に固まる。
「このパイうめぇな!!」
「……歯をくいしばれ猿」
「えっ!?」
「みんなパイを持ってて」
言うが早いか昨日作ったパイをまーくんに渡すと、私は剛に回し蹴りをお見舞いした。
「そっか!今日バレンタインだもんねー」
「泉の手作りチョコだー!わーい」
リビングのテーブルにつき、みんなに私の作ったパイをご馳走する事にした。ある一名を除いて。
「なーごめんってー!ちょっとしか食ってねーってー!食べたいー!」
「霞でも食ってろ」
「仙人かよ!!」