第6章 五章「手作りチョコレートと言い張るなら、カカオから」
「ぐふっ」
「ほーい、もういっちょ」
相手が怯んだところで今度は顎にパンチを一撃。さすがに人を殴るとこちらの手も痛い。
男はそのまま倒れた。追って、女と、この騒ぎで駆けつけた警察官が登場した。
「君、怪我は?」
「ないです。はい、鞄」
「あ、ありがとうございます」
「君は…?」
「わ…俺はただの通りすがりの便利屋です。では、仕事があるので」
私は低い声を意識してそう言うと、三人を残してその場を立ち去った。
おかげで、依頼人の家に行くのが少し遅れてしまったが、依頼人は人のいい初老の女性で、「いいのよいいのよ」と笑ってくれた。
その頃V6は新曲のPV撮影の打ち合わせの為、某スタジオにいる。
「ねー、大丈夫かな。泉一人にして」
「確かに心配だよね」
「いずれこうなる事はある程度予想してたけど、いざそうなると結構心臓に悪いな」
「腕っ節は強いけどなー」
剛の一言で、メンバーはある出来事を思い出していた。
それは、まだ私が十代の頃の話だ。
ある日、V6と私が歩いていると、不良の集団に囲まれた事がある。そいつらはV6だと知っていて、やっかみなのだかかっこつけなのだか分からないが、執拗に絡んできたのだ。
私はこういう輩が好きではない。群れないといきがれない、自分よりも弱そうな人間を見ると偉そうに難癖をつけてくる。
V6も正直厄介だな、と思っていたのだが立場上手を出せないのだ。
そこで前に出たのが私だった。メンバーは私を止めたが、それでは不良たちがつけあがる。
「こいつらが手出しできないのを分かっててつっかかるんだから、カッコ悪いよねぇ。自分たちの身の安全がわかってからじゃないといきがれないんだ」
「んだとぉ?おこちゃまは引っ込んでろ」
「そのおこちゃまに正論言われるって…情けなー」
「てめぇ!!」
「おい、泉」
「いいからみんなは下がってて」
「でも…おい、泉危ない!」
私が後ろを向いてまーくんと話しているところを、不良たちの一人が殴りかかってきたのだ。私は腕を盾にしてそれを防ぐと、思い切りそいつの腹を蹴った。
すると、逆上した不良たちもこちらに向かってくる。
「あとでいつもの公園に集合!早くどっか行って!」
「でも」
「ここで変な写真とか噂流されたらどうすんの!早く!」
その訴えにみんなは顔を見合わせて、その場を去る。