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ぶいろく一家

第6章 五章「手作りチョコレートと言い張るなら、カカオから」


「じゃあ、行ってきます!」
「うん、行ってらっしゃい、頑張ってね」

V6を見送り、私は家に一人となった。
ここで一応説明しておくが、今は二月二日。私たちは剛の誕生日を祝った前章の少し前の時間にいる。

部屋で一人、男らしく見える練習をしてみようと思い、ポーズや表情を鏡で研究する。

「…やぁ、お嬢さん、綺麗だね。僕と踊ってもらえませんか?……なーんて…ね…」
「……」

何故健ちゃんがここに。

「忘れ物取りに来ただけなんだ。ごめんね、覗いて。じゃあね」
「け、健ちゃん!!」
「大丈夫。なにも見てないから。あ、仕事遅れちゃう」
「その優しさが逆につらいの!!なにか言ってよ!!ねぇ!!」
「行ってきます」
「あぁぁぁぁぁ!!!」

無情にも私と健ちゃんの間を、ドアが隔てた。

死にたい。

なんとか立ち直った私はあとで全力で健ちゃんに口止めする事を誓い、パソコンでとあるサイトの記事を巡っていた。
それは、まさにこの話を書くに当たって重要となるテーマ、「手作りチョコレート」に関する記事だ。
そう、もうすぐバレンタインなのだ。剛の誕生日の計画や練習はある程度形になってきているが、私にはこちらの心配もあるのだ。
一応、あいつらにチョコレートを用意せねばならない。

「なーににしよっかなぁー」

すると、携帯電話が鳴る。
非通知だ。

「はい。もしもし」
「……」
「……あのー」
「……」
「…じゃあ、チャーシューメン一つで!」
「じゃあってなによ!!!!」

切れる。あ、電話が。相手もだけど。
前回の件と言い、最近いたずら電話が多くて困る。
私はふとあの手紙の存在を思い出した。…まさかね。

今日は依頼が一件入っている。
迷子のペットを探してくれとの事だ。この手の依頼は割と大変だ。動物の行動予測などそう簡単にはできない。
私はしっかりと男装をし、家を出た。

依頼人の家までの道で、なにやら女性の叫び声が聞こえる。

「その人を捕まえてー!!」
「どけぇ!!」

男が女物のバッグを片手にこちらに走ってくる。その後ろでは化粧の派手な女が必死の形相で男を追っていた。
男は私のすぐ近くにまで来ているが、私はどかない。

「てめぇ、どけって言ってんだろ!!」

男の手にはナイフが握られている。
私はナイフを持った男の右手を避け、右に反転し、そのままの勢いで男の腹を蹴った。
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