第6章 五章「手作りチョコレートと言い張るなら、カカオから」
いつもと変わらない朝、私は外のポストに新聞を取りに出ている。いくつかの郵便物と新聞を取り出すと、一枚の手紙が落ちてきた。
「ん?」
拾ってみると、宛名も差出人の住所も名前も書いていない、質素な封筒。つまり、郵便で出したのではなく、直接ポストへ投入したものだろう。
玄関のドアを閉め、新聞や郵便物を所定の位置に置くと、私は部屋へ戻って手紙を開けた。
内容はこうだ。
「お前は何者だ
V6に近づくな」
「………」
言葉が出ないが、動悸が早くなる。
もしかして、ばれてしまったのだろうか…私がここでV6と暮らしている事が。
コンコン
「はい!!」
「おはよう、泉。どうした?顔色悪いけど…具合悪い?」
「ままままま」
「壊れた?」
「まーくん!ちょっと来て!」
「もう来てるけど…」
「あ、そっか!じゃあとりあえず入ってドア閉めて!」
「あ、あぁ」
まーくんはわけもわからぬまま私に言われたとおりにする。
私はまーくんと向かい合って正座すると、先ほどの手紙を差し出した。
まーくんは無言で受け取り、無言で読み、無言で私を見る。
「これ、どうしたんだ?」
「今朝、新聞取りにポストに行ったら、入ってて…ば、バレちゃったのかな…」
「いや、でもお前は何者だ、って書いてある以上泉の正体はまだバレてはいないな…んー。とりあえずみんなにも報告しておくか」
「そうだね」
というわけで、朝食の席でまーくんはみんなに先ほどの手紙を披露した。メンバーは押し黙る。
「とりあえずー…泉」
「ん?」
「味噌汁おかわり」
「お前は時と場合をわきまえろや、なぁ?」
「だって、犯人がわからない以上、ここであーだこーだ言ってても仕方ねぇじゃん」
そう言って二杯目の味噌汁に口をつけながら、剛が言う。
「確かに。ここで俺らが慌てて取り繕っても、ボロが出る可能性の方が高い」
「井ノ原君、なんで俺を見ながら言うの?」
「とにかく、いつもどおり。でも、泉はもう少し男らしく振舞ってね、外では」
「後はまぁ…しばらくデート禁止」
「ええええええええ!!!!???」
「今までで一番の反応だな」
まーくんの発言にほかのメンバーはそう声を揃えたので、思わず私は呟く。
結局朝食の席で決まったのは、私は男らしく、しばらくデートは禁止、この二つだった。