第5章 四章 「祝うと呪うは似ている(森田編)」
剛が顔を覗き込んだり、私の額に手を当てたり、呼吸を確かめようとしているのが分かるが、こういう時に限って笑いがこみ上げてくるのだ。
そして、ここぞとばかりに剛が私の胸を揉んだ。
「揉み心地はいつも通り残念だ…」
殺したい。
「…ここまでしても起きないって事は、マジなのか…」
早く終われと思う十分がやけに長く感じた。
やっと十分経ち、剛が私を軽々と持ち上げ、一階に降りていく。
そして、リビングの扉を開けた瞬間、パーン!!という小気味よい破裂音が響いた。
剛は目を点にして、しかし私の事は落とさないように頑張っている。
「剛(森田、剛君)、誕生日おめでとー!!」
「…はぁぁぁぁぁぁ!!!???」
「おめでとー」
「へっ…泉!!お前平気なのかよ!!」
「うん。とっても平気」
剛に抱えられたまま、私は手足をぷらぷらさせて元気だという事をアピールした。
剛は脱力し、やっと私を地面に下ろしてくれた。
「だってさぁぁ!病名とかすっげーリアルだったじゃん!ゴウ・オメデトウ症候群だっけ!?……あぁぁぁぁぁ!!!」
「あ、ネタバレする前に気付いちゃった」
「馬鹿なんだか鋭いんだか」
剛はしゃがみこみ、しばらくぶつぶつ「騙された」だのと呟いた後、私達を睨んだ。
「なんで歌いだしたのかずっと謎だったんだよぉ…つか、なんでこんな事すんだよ!」
「だから、誕生日おめでとうのサプライズだよ」
「誕生日?…あ、俺今日誕生日か!!」
まーくんの発言で改めて自分が誕生日だということに気付いた剛は、かなり混乱しているご様子だ。
十分前に、料理などを出して準備しておいてくれた五人のお陰で、リビングはパーティーモード一色である。
「まーまー、そう怒らないでさ。みんな剛をびっくりさせようと思ってやったんだよ?ご飯も冷めないうちに、お祝いしよ?」
「うー…つーか泉も乗るなよなー」
「結構楽しかったよ」
諦めたのか、剛ははぁ、と一つ嘆息を漏らすと、テーブルに移動した。
そして、パーティーが始まる。
「かんぱーい!」
「泉!それ中身なに!?」
「え、オレンジジュース…」
「…ふぅ」
「もうお酒は飲まないったらぁ!」
さっきまで少々不機嫌だった剛だが、私とまーくんの作った料理を一口食べると、一気に機嫌を直し、子供のようにがっついた。
楽しいパーティーだ。