第5章 四章 「祝うと呪うは似ている(森田編)」
17:30 剛健、帰宅。健ちゃんが剛を私の部屋へ
「泉!!」
「剛、健!」
「泉の具合は!?何があったんだよ!」
しばしの沈黙。みんな神妙な面持ちだ。私はベッドの中で寝ているだけなので楽なのだが。
すると、准君が部屋から出ようとする。
「おい、岡田…」
「ごめん。俺には耐えられへん…」
何に耐えられないのかは、この後すぐ明らかになるだろう。
突然、トニセンが膝をついた。
「みんなどうしっ…」
「泉はぁ~♪」
「重い病に~♪」
「かかってぇ~♪」
「しまったのだぁ~♪」
笑いを堪えながら説明すると、最初の発言は剛。次にいきなり歌いだしたのが博君、そしてイノッチが歌い、まーくんが歌い、最後はトニセンの三人がハモっている。
ちなみにドアの外では准君が声を押し殺して爆笑していた。
「…は?」
「さっき訪問医師に来てもらってね、診てもらったら、厄介な病気らしいんだ」
「ちょっと待ってなんで今歌ってたの?」
「これを治すには、悔しいけど剛の力が必要なんだよ」
「ねぇ、なんで歌ったの」
「俺たちではどうすることもできねぇんだよ!」
「聞いてる?」
そこで准君が戻ってくる。笑い泣きした為か目元に涙が溜まっているが、それがある意味功を成したのかもしれない。剛が改めて話を聞く態度になったのだ。准君、ナイスアシスト!
「俺にしか治せないって。そもそもなんの病気なんだよ」
「ウトデメオ・ウゴ症候群って病気らしい」
「うと‥え?」
「ウトデメオ・ウゴ症候群って病気らしい」
この辺りのやり取りは五回ほど繰り返された。
もちろんお気づきだと思うが、「ごうおめでとう」を逆さまから読んだだけだ。安易すぎるが、剛なら気づかないだろう。
「ちなみに新病で、まったく浸透していない病名だから、ネットで調べても無駄だぞ」
イノッチが一応釘を刺す。
剛は信じきっていて、神妙に頷いた。
「それで、俺に出来る事って?」
「十分後、泉をリビングに運んできてくれ」
「…分かった」
「それではお先にぃ~♪」
今度は剛と私を除いた五人でハモる。
「だからなんで歌うんだよ!」
誰も答えないまま、扉が閉まる。
「わけわかんねぇ…おい、泉?」
「……」
私は思う。これ寝てるだけの演技ってつらい。