第5章 四章 「祝うと呪うは似ている(森田編)」
さて、宴もたけなわ、というところでみんなからのプレゼントを剛に渡す場面となった。
みんなでお金を出し合って、というのも考えたのだが、せっかくだから各々剛に合ったプレゼントを渡そうという事になったのだ。
「はい、剛。誕生日おめでとう」
そう声を揃えてみんながプレゼントを渡す。
剛は一瞬少年のように顔を輝かせ、プレゼントを受け取った。
そして一つずつ包装を開けていく。
「長野君のは…国語辞典……岡田のは、英和辞典……健のは……和英辞典……ごめん。俺もう開けたくない」
私たちはなにも言わず静かに微笑んだままだ。業を煮やした剛は残りの包みも開ける。
「井ノ原君…ことわざ辞典……坂本君、四字熟語辞典……泉のは……電子辞書。待てこれよく考えなくても馬鹿にしてるだろ!?ってか泉のプレゼントで全部事足りるじゃん!!!」
「いやぁ、みんな考える事は一緒だね」
「うんうん」
「最悪の誕生日だ。もう寝る!!」
さすがの剛も散々馬鹿にされたようなプレゼントに拗ねてしまい、後片付けもしないまま部屋に戻ってしまった。しかし、律儀に私たちからのプレゼントを抱えて。
私たちはやりすぎたか、とも少し思い反省したが、きっと部屋で剛が気づいてくれる事を信じている。
私たちが後片付けをしている間、剛は自室でプレゼントとにらめっこしていた。
「ん…?あれ、みんなからのプレゼント、もう一つずつある」
メンバーはみんな辞書のほかにプレゼントを用意していたのだ。もちろん、私も。
ほかのみんなのプレゼントは知らないが、剛がにこっとそれらを眺めている辺り、彼が喜ぶプレゼントだったのだろう。ちなみに私があげたのは、以前スイーツを食べに行った際、街を歩いている時に剛がいいな、と言っていたネックレスだ。
片付けが終わったあと、私は一人で剛の部屋へ向かった。
「剛、開けるよ?」
「んー」
「やほ」
「おう。あのさ、ネックレスありがと。毎日つけるから」
「お。気付いたか。うん、ちゃんとつけてね。あと、もう一つ、びっくりさせちゃったお詫びで」
「え?」
私は無言でベッドに腰掛けている剛の頬を両手で包むと、深い深いキスをした。
しかし、素面でこれは恥ずかしい。唇を離すと、私はすぐに自分の部屋へ戻った。
残された剛はしばしあぜんとし、笑う。
「最高の誕生日だな」
第四章 完