第1章 序章「幼馴染に頼まれてこういうことになった」
「おおー!!」
リビングに入った途端、歓声が上がった。
なんだか複雑な気分だ。
「……V7か……」
「入らねぇよ!?」
ぼそりと呟く准君についツッコんでしまう。
どこから仕入れた情報なのやら、服のサイズはぴったりだ。基本的にシンプルな格好しかしない私は、そこまで違和感を感じない。しかし、問題は髪だ。本来の私は黒で髪が長いのだが、今被っているウィッグはダークブラウンで、首に若干かかるくらいの長さである。なんだかスースーするな……
「問題ないんじゃない?」
「うんうん!似合ってる!」
博君と健ちゃんが私の周りをくるくると回りながら眺めている。
「あーもう!なんでこんな事になっちゃったのよー!!」
「あっはっは!そこまでしておいて今更ひでぶっ」
「お前が発端だろうが……」
大笑いしている剛に回し蹴りをお見舞いすると、誰かのお腹が鳴った。
「あ、そういえばもう夕飯の時間だね。私何か作るよ」
「俺も手伝う。さっき買い物してきたんだ」
私と一緒にまーくんも立ち上がる。先ほどの袋は今夜の夕飯の材料だったらしい。
キッチンも広くて、さすがこの六人が借りた家だな、と思う。そういえば……
「あ、家賃だけど、泉は負担しなくていいから。俺らの無理聞いてもらってるし」
私の考えを見透かしたかのように、まーくんが包丁でキャベツを刻みながら言った。
正直助かると言えば助かるのだが、それはそれでなんだか悪い気もする。
「今、それは悪いなーって思ってるだろ?」
「まーくんってエスパー伊東?」
「伊東はいらなくない?ねぇ」
「ところで伊東」
「伊東じゃないからな!?」
「あはは、嘘だって。ありがとね。助かるよ」
今夜はとんかつだ。しかし、一人暮らしが長い私には、七人分の夕飯を作るのに慣れていないので、量に困る。しかもこいつら結構食べそうだしなぁ。