第1章 序章「幼馴染に頼まれてこういうことになった」
「さすがまーくん、手際がいいね。料理コーナーを持ってるだけあるよ」
「いや、本当、料理に凝っちゃってさ。色々な料理グッズとか買っちゃったんだけど、なかなか使う機会がなくて」
「これからはあるんじゃない?」
「あ、泉」
「ん?」
まーくんの手が突然私の頬に触れたので、私は思わずビクッと体を震わせてしまう。
「ソースついてる」
にこっと笑い、指についたソースを舐める。この人は結構こういう事自然にできちゃうんだよなぁ。
私は「ありがとう」と呟くと、赤くなったのをごまかすように、顔を背けた。
「おっ!おいしそ!ねー、味見していいー?」
健ちゃんが私を後ろから抱きしめるように飛びついてくる。
「アツアツの出来立てをあげるね」
「わーい!って!さすがに油から出したてのは食べられないよ!?」
「お、うまそ。あーん。あづっ!」
「あ、イノッチ!つまみ食いしちゃだめでしょー」
「ひへはいひょ!」
「……あ、うん」
「してないよ」と言いたかったのだろう。そして舌も火傷したのだろう。
「はい!ご飯できたよー!」
「待ってましたー!」
テーブルにできた料理を並べると、メンバーの顔が輝く。それが微笑ましく思った反面、どこか寂しい気持ちになった。今まで感じたことのない、温かい気持ち。家族というのは、こういうものなのだろうか……
何故か、酷く泣きたくなった。
「どうした?」
六人の声が綺麗に重なる。きっとそれだけ今の私は悲しそうな顔をしていたのだろうが、それがそのみんなの一言で吹き飛んでしまった。
「くっ……」
「泣きそうになったり笑ったり、忙しい子だなぁ」
博君が優しく頭を撫でてくれた。