第4章 三章「傍目から見たら兄弟的な。(カミセン編)」
私は無類の猫好きである。
野良猫を見つけると時間を忘れて追い続ける程だ。だが、猫を飼う財政力と環境がなかった為、その夢は叶っていない。
そんなある日、健ちゃんがいつものようにソファで寝そべる私の上に乗っかってきた。
「もー。重いっつってんでしょーよー」
「ねーねーねーねー」
「何かね」
「猫、お好きですよね?」
「猫屋敷を作るのが夢ですが何か」
「今大きなイベントやってて、いっぱい猫がいるんだって。ねー、一緒に行こー」
「マジで!?行く!行く行く!」
ガバッと体を起こすと、健ちゃんが転がり落ちた。まぁいいけど。
健ちゃんは打った頭を涙目で押さえながら、にーっと笑った。
「やったやったぁ!あのね、色んな種類の猫がいるんだって!」
「うひょおおお!!!」
「…今奇声を上げたの、泉ちゃん?」
それ程までに声が大きかったのか、二階から博君が降りてきた。
健ちゃんは嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねながら、
「これから泉と出掛けてくるねっ」
と少年のように言った。
私もかなり乗り気である。
そして、私と健ちゃんはイベントに行く事となった。
車に乗り込むと、健ちゃんは何やら表情が暗い。
どうしたのか、と顔を覗き込むと、取り繕ったように笑った。
「車の運転に自信がないと見た」
「うう…当たり…。でも!隣に乗ってるのは泉だから、ちゃんと安全運転で行くからねっ!」
「うん、そうしてくれると助かるね」
「…死ぬ時は一緒だよ」
「弱音が早い」
正直私もかなり緊張しているわけだが、車は緩やかに走り出した。
しかし、会話がない。話しかけようかとも思うのだが、健ちゃんの表情が真剣そのものなので、声を掛けづらい。でも、健ちゃんのこういう表情が見られるのは結構貴重なので、これはこれで役得なのかもしれない。
「ふうう……ごめんねぇ、泉ー…楽しくおしゃべりしながら運転出来ればいいんだけど…」
「気にしないで」
「よし!地獄へのハイウェイだ!」
「そこは気にして」
やっとの事で会場に到着する。
結構な人が集まっているようだ。チケットを買うと、私達は天国へ足を踏み入れた。