第4章 三章「傍目から見たら兄弟的な。(カミセン編)」
「ふにゃあああ……」
私の第一声である。
仔猫がとことこ、眺めている人を興味深そうに歩きながら見つめている。くっっそ…可愛すぎる…
健ちゃんもそんな猫を目を細めて見ている。
「かわいいねええ…」
「泉の方が可愛いけどね」
「猫の方が可愛いに決まってんだろ!!」
「え!?そこ怒るところなの!?」
世界中の猫が集まっている空間に私は本気でここに住みたいと思ってしまった。
「モフモフしたい…」
「俺は泉をモフモフしたいよ」
「へー」
「興味ゼロ!?」
そんな時、とてつもなくいい場所を見つけた。
なんと、仔猫を抱っこ出来る所があるのだ。私は健ちゃんの手を引いてそちらに一目散に向かった。
「うわぁ。ちっちゃいねぇ」
「うんうん!小さくて可愛いー」
「俺この子抱っこしたいー」
健ちゃんが選んだのはアメリカンショートヘアーの仔猫だ。健ちゃんは壊れてしまわないようにゆっくりと丁寧に仔猫を抱いた。
私は白と茶色の混ざった仔猫を選ぶ。
指をクルクルと回すと、それを捕まえようと必死で手を動かす。
「泉…顔が緩みきってるよ?」
「ええねんー…かわええねんー……」
私が健ちゃんの存在を忘れて猫に夢中になっていると、健ちゃんが急にしゃがみ、私の膝の上に顔を乗っけた。
微妙に膨れっ面だ。
「どったの?」
「もー。猫もかわいいよ?でももっと俺も構ってよお」
「子供じゃないんだから…」
仔猫は健ちゃんの顔をぺしぺしと叩いている。
「やだやだぁ。俺も撫でてー」
「はぁ、仕方ないなぁ。はい、可愛い可愛い」
「えへへー」
「もういい?」
「もうちょっと!お前ー、いいだろー。今はお前じゃなくて俺が構ってもらってるんだぞー」
何を猫に対抗意識を持っているのか分からないが、それに反応するように仔猫がにゃ、と短く鳴いた。
「ねぇ…あれって三宅健じゃない?」
心臓がドキリと高鳴った。
右を見ると、こちらを見ている女性二人がいる。健ちゃんも聞こえていたらしいが、意に介さない。
仔猫をいじっている。
「ね、ねぇ、大丈夫かな」
「別にほっとけばいーじゃん。俺悪いことしてないもん」
「そりゃそうだけど」
「俺は今は泉と楽しんでるの!そうでしょ?」
それこそ仔猫のような純粋な目で私を見上げてくる。不覚にも可愛いと思ってしまう私がいた。