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ぶいろく一家

第4章 三章「傍目から見たら兄弟的な。(カミセン編)」


「んんっ……んっ…剛…ストップ…」
「ぜってーやだ」
「っ…んっ……んー!!」

舌が絡まる。さっきまでの心地よい冷気はどこに行ったのやら、体が熱い。
剛の肩を叩いても、剛はキスをやめない。
この華奢な体からどうしてこんな力が出てくるのだろう。
私は普段と全く違う剛の姿に戸惑っていたが、やがて、受け入れるように首に手を回した。
なんだか、安心する。
他のみんなにキスをされた時も安心した。しかし、剛はなんだか違うような気がした。
昔よく遊んでいた時、私にとって剛の存在は大きかった。だから、そんな剛が自分の所へ帰ってきたような、不思議な気持ちが襲った。

「泉…好きだ」
「…私も、好きだよ」
「俺が?みんなが?」
「……みんなが」

私の答えに、剛は残念そうな顔をする。
でも、事実なのだ。私は今迷っている。誰かの恋人になれるなんて烏滸がましい事は思っていないけれど……でも、少なくとも私にとってV6と言う存在は大きすぎる。剛も、みんなも例外なく大切なのだ。
なんとも言えない空気が漂うが、それを一蹴したのは剛だった。

「いーよ。今はな。でもいつかぜってーに俺のものにするから、覚悟しとけよ」
「ふっ…はいはい」

そしてまたキスに戻る。
指は再び絡まり、剛にしては乱暴でない優しいキスだ。
……が。

「剛」
「ん?」
「左手がさっきから胸に当たってるんですが」
「あらやだっ!俺の左手に何かが宿っているわ!」
「阿呆でも宿ってるんじゃない?」
「でも揉み心地がぜんぜひでぶっ」

全て言わせずに腹に蹴りを入れる。
今はサラシを巻いてるからそうなのだ。……そうだよね?

「安心しろよ、泉」
「何が?」
「俺が大きくしてやるから」
「何を?」
「残念おっぱごめんなさい!!」

拳を作ると剛は土下座をして謝った。
そして目が合うと、笑う。
これが私と剛だ。

「んじゃ、そろそろ帰るか」
「そうだね」
「あ、井ノ原君からメールだ」

携帯を覗き込むと、

「今日は奮発して高いプリン買ったから早く帰って来なさい」

と書いてある。

私と剛は違う意味で家に帰りたくない、と思ってしまったのであった。
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