第1章 序章「幼馴染に頼まれてこういうことになった」
「他のメンバーはなんて言ってるの?」
「泉なら適任だって。あ…でも…んー…」
「なによ?」
剛は煮え切らない様子で曖昧にごまかすと、話を進めた。
「で、どう?」
「まぁ、今の家も丁度家賃更新の時期だし、いいけど……」
「うおっしゃぁぁぁぁぁ!!!」
「うるせぇ」
「すみません」
「でもさ、ファンが知ったらとんでもないことになるんじゃないの?私面倒事は嫌だよ」
「大丈夫!ちゃんとあんみつに計画立ててるから!」
「……めんみつ、ね」
「……うん」
そういう事で、私は一週間後、大きな一軒家の前に立っているわけなのだが。
「はぁ……なぁんか気が乗らないなぁ」
「よっ」
突然頭をぽんっと叩かれたので振り向くと、そこには、件のV6のリーダー、坂本昌行が立っていた。手にはスーパーの袋が握られているのを見る限り、買い物にでも行っていたのだろう。
「まーくん、久しぶり」
「うん、久しぶり。とりあえず入りなよ。はい、これ、この家の鍵ね」
「あ、うん」
「今回はごめんな。急な話で」
「いいよいいよ。剛の突拍子のない話には慣れてるから」
「はは、さすが泉」
そうして、まーくんに背中を押され、私はこれから暮らす新居に足を踏み入れたのだった。
「泉ーっ!」
「うおぉぉっ!け、健ちゃんっ!いきなり抱きつくの禁止!」
「うー……じゃあじわじわ抱きつく」
「どういうことだよ」
彼は、三宅健。人懐っこくて、可愛くて、年上だけどなんだか弟のような存在だ。
私は健ちゃんを押しのけると、そこに揃っているメンバーに挨拶をした。
「みんな、久しぶり」
「泉ちゃん、久しぶりだね。ごめんね、今回は迷惑かけるけど」
「博君、気にしないで」
「なになぁにー?泉来たんだー!いらっしゃー!」
「イノッチ久しぶり」
「泉、久しぶり。元気?」
「准君、やほ。元気元気」
長野博、井ノ原快彦、岡田准一。そして、
「泉なんでここにいんの?」
「蹴り殺すよ?」
「嘘です」
森田剛。
私はこれからこのみんなと暮らす事になる。
あぁ、先が思いやられる……