第3章 二章「傍目は男同士でお出かけです(トニセン編)」
外は大分暗くなっていて、ひんやりとした風が心地良い。
車に乗ると、博君が提案した。
「ここをちょっと行くと、いい所があるんだ。せっかくだからどうかな?」
「うん、いいよ」
車内での会話は、鉄道博物館の話題で持ちきりだ。こういう風に自分の好きなものと同じものを好いている人と話すのは、とても楽しい。
少し坂を上がったところで、博君が車を止めた。
「さ、降りて」
車から降りた瞬間、その景色に私は息を飲んだ。
街の灯りがまるで飾られた照明のように、キラキラと暗い夜を照らしている。
街が一望出来、とても素敵だ。
隣に博君が立つ。
「これをね、いつか見せたかったんだ」
「誰に?」
「好きな人に」
「えっ…」
博君は私の唇に指を当てた。静かに、という意味らしい。そして、ゆっくりと指を離し、自分の唇に変えた。
長いキス。誰かが見ていないか、などという不安は消えていく。
「もっと、欲出していい?」
「えっ…ぁっ…んんっ!んぁっ…」
博君は私を思い切り抱きしめると、口調とは裏腹な激しい、でもどこか優しさのある求めるようなキスに変えた。息が苦しくなる。その度に一度唇を離し、私の心の準備を待ってくれる。私が頷くと、また激しいキスを…その繰り返し。
どれだけ時間が経っただろう。ようやく顔が離れる。私は恥ずかしさで、博君の顔が見られない。
「どうした?」
「博君でもこういうことするんだなって…」
「するよ。泉ちゃんになら。俺、紳士じゃないからね」
「ふふっ…」
「ん?」
「キスしてる最中も、紳士的だったよ」
私は耳元で囁き、頬に軽くキスをすると、いち早く車に戻った。
「ズルイよなー。本当」
博君は私に聞こえないようにそう呟き、自分も車に戻った。
家に帰ると、やはり待っていたのはメンバー全員だ。
「おかえり!お土産!」
「あぁ、はい」
「飴!!しかもポケットから出した!?」
「いつのかわかんないけど」
「最早お土産じゃねぇよ!?」
健ちゃんと剛が騒ぐ中、まーくんが「何もされなかったか?」と聞く。私はふふん、と微笑み、
「さて、それは紳士的な博君に聞いて下さいな」
と家の中に入った。
「紳士的紳士的ってさー、長野君って結構腹黒いよなー」
「これが俺なの」
博君はスッキリした顔で、笑った。