第3章 二章「傍目は男同士でお出かけです(トニセン編)」
博君は一瞬きょとん、とした後、頭を掻いて「お見通しだったかー」と呟いた。
私がその理由を問うと、少し間を置き、ぽつりぽつりと話し始めた。
「俺ってさ、アイドルとか俳優とか色々な事やらせてもらってるから、経験は豊富な方だと思うんだけど、イマイチ自分の魅力がわからないんだよ」
「どうして?」
「坂本君みたいになんでも器用にこなしてみんなをまとめて行くタイプでもないし、井ノ原みたいにみんなを明るくさせるって事も出来ないし、剛…」
「ストップ」
私が真剣な顔で手を前に出したので、博君は驚いて口を噤んだ。
私はちょっとだけ怒りながら、博君に言った。
「博君は、一緒にいると安らぐし、剛にもさっき言ったけど紳士的だし、確かにちょっと偏ってるかもしれないけど、知識も豊富。それに、なんだか包み込んでくれるような柔らかさがあるよ。博君にファンがたくさんいるのは、そういう所を認めてるからじゃないの?そんなに卑屈になることない。博君は魅力がたくさんあるんだから」
そう言うと、博君は驚いたような顔をした後、いつもの温かい、優しい笑顔になった。
「その顔」
「え?」
「そういう優しい笑顔、私は好きだよ」
「…ふ。泉ちゃんがそう言ってくれるなら、俺も自信持てそうだよ」
「うんっ!」
「…紳士的…かは分からないけどね」
「ん?」
「いや、なんでもない。さ!次は何を見ようか!」
博君はコーヒーを飲み干すと、すくっと立ち上がる。元気が出たみたいだ。よかった。
私も立ち上がり、今度は手を繋いで、他のメンバーにはない、二人の世界に突入した。
あるコーナーに行った途端、私と博君は声を揃えて「おー!」と感嘆の息を漏らした。
なんと、蒸気機関車の運転を体験出来るコーナーがあるらしい。
「すごーい!」
「まずは泉ちゃんからどうぞ」
「いいの!?」
「うん」
レバーを引くと、ポーーーッと蒸気を出す音が響き、結構リアリティがある。
凄い、楽しい。次に博君が体験をし、結構迫力あるなーと笑い合った。
そんな楽しい時間はあっという間で、そろそろ閉館が迫っていた。
「そろそろ行こうか」
「そうだね」