第3章 二章「傍目は男同士でお出かけです(トニセン編)」
イノッチとのデートから三日程経ったある日、私は博君とテレビに釘付けになっていた。
鉄道博物館のCMが流れているのだ。
「私も機関車とか運転してみたかったんだよねー」
「俺も俺も!っていうか、機会があるなら今でもしたいもん」
他のメンバーは「えー?つまんなさそう」と各々別の事をしている。
自分の部屋行きゃあいいのに。
そこで、博君が思いついたように立ち上がった。
「俺出かけてくる」
私の手を取って引っ張り、私も立ち上がらされた。何事か、とみんなが注目していると、
「泉ちゃんとここ、行ってくるから」
「なにぃー!?」
メンバーが叫ぶ。私はというと、驚きもあったがそれよりも嬉しさが勝って「ほんとっ?」と博君の顔を見上げていた。
博君はうん、と優しく頷くと、ポカンとしているメンバーを置いて私の手を握り、玄関まで歩き出した。
「お、おいおい、本当に今から行くのかよ?」
まーくんが動揺を隠せないまま玄関まで出てくる。
「何か不都合あるー?」
「う…そりゃ…ないけど」
「なんか急だけど、行ってくるねー」
「軽い!!もうちょっと危機感を持ちなさい!」
「剛と違って博君は紳士だから大丈夫ですー」
べーっと舌を出すと、私と博君はCMで流れていた鉄道博物館へ向かうのだった。
場所はそこまで遠くなく、博君の運転する車で30分程で到着した。
「うわー!ねぇねぇ!蒸気機関車!」
「うん!なんかワクワクしちゃうね」
「だねっ!」
明治期に活躍した、車号150などがズラリと広いスペースに並んでいる。
博君と私は、興奮冷めやらぬまま、様々なレトロ感溢れる鉄道車を見て回った。
お互い知識があるため、一つ一つの車両を見る度、これは初めての旅客車両で…などとわいわい盛り上がる。
博君がこういうものを好きだと言うことは知っていたが、こんなに話の通じる人と話したのは初めてで、新鮮さと嬉しさが溢れる。
博君も自分一人で見入るのではなく、きちんと私と同じ目線で話をしてくれる。
本当に紳士的だ。
「ちょっとはしゃいじゃったね」
「うん。でも、よかった」
「ん?何が?」
「博君が楽しめたみたいで。最近なんか考え事してたみたいだから」