第3章 二章「傍目は男同士でお出かけです(トニセン編)」
「おおー。結構高いねー」
「遊園地と言ったらこれだよ。あ、そろそろ頂点だね」
そう言い終わった後、イノッチが急に静かになる。どうしたのかな?
イノッチは無言で私の隣に移動してきた。
そして、そっと私の肩を抱き寄せながら、
「俺の事、ちゃんと男として見てよ」
と囁いた。その言葉にドキリとする。確かに、イノッチといるのは楽しいし、今日も本当に楽しめた。でも、言われてみればイノッチを男の人として見たことはあまり無いかもしれない。私はそうさせてるのはイノッチ自身だと思っていた。まーくんとはまた違った、頼れるお兄さんって感じで見ている。でも、こんな顔でそんな事を言われたら、急に意識してしまう。
私はだんだん顔に熱を持つのを感じた。
そろそろ頂点に達するところで、突然私の携帯電話が鳴った。
「あ、剛からだ」
「出ていいよ」
「え、でも…」
「いいからいいから」
少し躊躇いつつも、通話ボタンを押す。「泉ー?何時頃帰ってくるー?」という呑気な剛の声が聞こえた途端…
「んっ!?…んっ…んうーっ」
イノッチがキスをしてきた。
それも、軽いものでは無い。深いものだった。剛が何か言っているが、それが本当に遠いものに感じて聞き取れない。
「ん…」
「可愛い声出すなよ。止まらないだろ」
男らしい話し方。ドキドキが止まらない。
「そんな事言われてもっ…んんんっ…はっ、ぁっ…」
こうして、観覧車が下に到着するまで、私とイノッチはキスをしていた。
帰りの車の中、少し気まずい雰囲気が流れている…と、思われたが、イノッチはあの時の真剣さはどこに行ったのやら、今日の遊園地での出来事を楽しそうに振り返っている。
ここで私が変に意識すると、なんだかイノッチと私の何かが壊れてしまいそうで、私も本当に、本当に楽しかった今日の一日をイノッチと一緒に談笑するのだった。
家に着くと、メンバー全員がお迎えしてくれた。
「おかえり!」
「ただいまー」
「井ノ原…ちょいちょい」
まーくんがイノッチを指でくいくい、と呼び寄せると、イノッチはほいほい?っとそちらに行った。
「泉になにしたんだよ」
「そうだよ井ノ原君!剛の携帯電話からなにやらいかがわしい声聞こえたんだけど!?」
轟々と非難されている中、イノッチは困ったような顔をしつつ、少し嬉しそうだった。