第3章 二章「傍目は男同士でお出かけです(トニセン編)」
まずは、定番のジェットコースター。もちろんテレビで観たり、話に聞いた事はあるが、実際に乗るのは初めてなので、少し緊張する。
それを悟ったのか、イノッチがぎゅっと手を握り、
「俺とだから怖くない!」
と胸を張った。
私もなんだかそんな気がしてきて、うん、と大きく頷く。
いよいよ、順番が回ってきた。
「あ!」
「ん?」
「ヅラ取れないかな」
「ヅラって言うなよ。大丈夫。ウィッグが取れない方法をネットで調べといたから!」
「…慣れたね」
「…自分でもそう思ってる」
とにかく、私達はこうしてジェットコースターに乗った。最初はゆるやかに走り、坂をゆっくりと上がっていく。その度に、緊張も高まってくる。
「ねぇねぇ泉!」
「ん?ぶっ…」
イノッチがとんでもない変顔を晒し、それを見た私は大笑いしてしまい、猛スピードの降下を怖いと感じなかった。
「はやぁぁ!!」
「楽しいでしょー!?」
「うんっ…つっ…あっはっはっ!お願いだから変顔やめて!!」
余裕があるのかイノッチが終始変顔なものだから、ついつい恐怖を手放してしまう。
あっという間に終わり、初めてのジェットコースターの思い出は、イノッチの変顔で塗りつぶされた。
「ジェットコースターであんなに笑う人初めて見たよ」
「お前の変顔のせいだよ!?」
次はコーヒーカップに乗ることにした。
「これって、こうやってクルクル回るだけ?」
「…ふっ。そんな刺激を求めるあなたに、こんなものをご用意しております!!」
「えっ?うおおっ!!凄い!早い!」
イノッチは真ん中についているシルバーのハンドルのようなものに手をかけると、思い切り回した。その度に回転速度は早まり、とんでもない勢いでコーヒーカップが動く。
このスピードで回したらコーヒー零れるんじゃないかな。
「あー!面白かった!」
「でしょでしょ?次はー…あ!お化け屋敷入ろう!」
「お、お化け屋敷?」
「怖いのー?」
イノッチがニヤニヤと馬鹿にするように笑ってくる。
「だってお化けってさ…殴っても蹴っても死なないじゃん」
「発想が物騒だよ」
と言ってもまぁ、お化け屋敷など人が創り出したものだ。大丈夫だろう、と私達はお化け屋敷に入る事にした。