第2章 一章「朝の日課はウィッグを被る事です」
翌日、家には私と健ちゃんしかいない。
どうやら健ちゃんだけ仕事が休みのようで、まだ寝ている。まぁ、無理に起こす必要もないし、疲れているのだろうから、そっとしておこう、と私は今回頼まれた仕事についての調査結果をパソコンでまとめていた。
「んーっ!コーヒーでも飲むか」
と、立ち上がると、とんとん…と階段を下る音がした。健ちゃんが起きたようだ。
リビングのドアを開けると、眠そうな目をこすっている。
「泉ー。おはよー」
「おはよ」
「今何時ー?」
「んーと、一時」
「眠いよぉ…」
「寝てればいいじゃん」
「だめっ!」
「うおっ!」
突然健ちゃんが大きな声を出すので、思わずビクッと反応してしまう。
「せっかく今日は泉と二人きりなのにぃー」
「さて、私は出掛けるか」
「まてーい!」
健ちゃんが私の襟首を掴む。そしてそのまま引っ張ると、私を腕の中におさめた。
息が耳に当たって、心臓が高鳴るのが分かる。
健ちゃんは何を言うでもなく、私の首元に顔を埋め、スリスリと顔を動かす。子供のようだ。
「泉…今度はちゃんと許可取るから。キスしてもいーい?」
「う…ちょ、ちょっとだけなら…」
「ほんとっ!?」
健ちゃんの顔がぱぁっと明るく輝く。
本当に子供だな。
健ちゃんの唇がゆっくりと近づいて来る。私がそっと目を瞑ると、お互いのそれが重なった。
はじめは軽く、しかし、それは段々と激しさを増した。
「んっ…んん……っ!」
くちゅ…っと舌の絡まる音がする。
私が思わず離れようとすると、頭を押さえつけられて叶わない。
「だめ、もっと…」
「健ちゃ…っ」
気持ちよすぎて、頭がくらくらしてきた。唇の端から、唾液が垂れているのが分かる。
「はっぁ…も…だめぇ…」
ようやく口を離してもらったが、上手く力が入らず、健ちゃんにもたれかかってしまう。
健ちゃんは嬉しそうに受け止めると、私の頭を撫でた。
「よくできましたー。はなまるっ!」
「…っさい、ばか…」
「頭くらくらする?」
こくりと頷く。
健ちゃんは私をそのままソファへ連れて行った。