第2章 一章「朝の日課はウィッグを被る事です」
六人が眠りにつき、私は一人リビングで一枚の手紙を読んでいた。
「本当にごめんなさい。
この子を、よろしくお願いします」
綺麗な字で、そう短く書かれている。これは、恐らく私の実の母が書いたものだろう。私が捨てられていたコインロッカーに添えてあったものらしい。
私は特に、父も母も恨んでいない。達観しているわけではなく、本当にやむを得ない事情があったのだろうと思っている。そう思えるのは、手紙の所々に、涙の跡があるからだ。
「あれ、まだ起きてたん?」
「あ、准君。そろそろ寝るよ」
私は手紙をポケットにしまうと、椅子から立ち上がった。
「おやすみ」
「なぁ」
「ん?」
「俺、ほんまに泉の前では素でおるから。東京暮らし慣れたけど、気を許せる相手の前では関西弁が楽なんよ。ええかな?」
「もちろんいいよ。准君が私に心を許してくれてるって、嬉しいし」
「そか。ありがとう。ほな、おやすみ」
「うん、おやすみ」
寝る前に携帯を開くと、剛からメールが入っていた。
「明日五時に起こしてー」
と、一方的なものだ。まぁ、こんなのはもう慣れたけど。
「はいはい」
と返事をし、私はベッドに入った。
翌朝、五時に目を覚ました私は、剛を起こそうと奴の部屋に入った。連日の舞台の稽古で忙しく、疲れているのか、爆睡している。
寝顔可愛いな、と悔しくも思ってしまう。
「剛、起きてー」
「んー……あと12分と54秒……」
「お前起きてるだろ」
すると、強い引力のせいで、私は剛のベッドに倒れ込んだ。そのまま剛は私を抱きしめ、体中を触ってくる。
「ひあっ…ちょっ…剛!起きなさい!変なとこ触らないで!」
「変なとこって…ここ?」
剛の指がつーっと下の方に下がってくる。思わず体をびくつかせると、「可愛い」と剛がキスをしてくる。
「やめっ…本当だめ!!」
なんとか剛のベッドから降りることができた。
「このエロ猿!」