第2章 一章「朝の日課はウィッグを被る事です」
家に着くと、全員が玄関まで迎えてくれた。
「泉おかえりー!って坂本君付きかぁ」
「俺をおまけみたいな言い方すんなよ」
「今日はカレーだよー」
五人のテンションが上がる。そんなわいわいの中、准君がそっと私の耳元で囁いた。
「リクエスト応えてくれてありがとな」
「いえいえ」
炊き出しでもするのか、というくらいの大鍋にカレーを作る。味はよし。
完成し、食卓に出すと、六人はとても嬉しい反応をしてくれる。
「あ、泉、仕事どうなった?」
「仕事?」
博君の一言に、他のメンバーは首を傾げた。
私は今受けている依頼の話をすると、なかなか骨が折れる、と嘆息を漏らす。
「そういえば、どうして泉は便利屋やってるんだっけ」
健ちゃんがカレーを口に運びながら尋ねる。
私が今この仕事をしている理由は一つ。きっと、叶わない願いだけれど。
私は、両親を探しているのだ。正真正銘、私を産んでくれた親を。その情報収集のため、顔を広くして探している、というわけだ。
そう説明すると、みんなが少し複雑そうな顔をする。
「わかってるよ、無謀だってね。でも、探したいんだよ。どうして私を捨てるに至ったのか、知りたい」
「俺は応援するよ」
「俺も」
次々とみんながそう言ってくれる。
それだけで、勇気が湧いてくるのだから不思議なものだ。
「便利屋さんにお願いがあるんだけど」
「なに?」
剛が真剣な顔をしているので、何事かと思ったら、皿を差し出し、
「おかわり!」
と元気いっぱいで言った。そこにいた全員が吉本新喜劇のようにズッコケる。
「普通に頼めないのかね、君は」
「華麗にカレーを彼の口元に運んだら彼がかれー!とカレーを」
「長いしうるさい」
「涙が出ちゃう、だって森田剛だもんっ」
「……キモ」
「そこ!聞こえてる!」
カレーをよそいながら、誰にも聞こえないように、「ありがと」と呟く。きっとこの雰囲気を一蹴してくれたのだろう。…いや、剛はなにも考えてないのかな。