第2章 一章「朝の日課はウィッグを被る事です」
男装を済ませると、いつも通り私が朝食の準備をして、みんなで食べる。
今日は新曲を出すとの事で、みんなでレコーディングや打ち合わせがあるらしい。
「V6での活動、久しぶりなんじゃない?」
「まぁ、しばらくは音楽番組に結構出ると思うよ」
「俺ら人気者だし?」
「へー」
「華麗なスルー!!!」
みんなを見送った後は、相変わらず家事。一応プライバシーがあるので、各々の部屋に入ったりはしないが、結構広い家なので、掃除機をかけるのも一苦労だ。
そして、今日は私も仕事がある。
例の浮気調査の件だ。
そういうわけで、私が仕事をしている時、V6はこんな話をしていた。
「お前ら、朝は泉をゆっくりさせてやれよ」
「坂本君はそうやっていい人ぶるー」
「一番タチが悪いのはお前だぞ、健。軽々しく女の子にキスするなよ」
「あのねぇ、坂本君。俺は女の子にしてないよ。泉にしたの」
ここで、メンバーの顔色が変わる。
「どういうことだよ」
「俺言っとくけど、泉の事好きだからね」
「健、残念だけど、あいつのファーストキスの相手は俺だぞ」
「あはは!冗談は顔だけにしてよー」
「原型なくなるまで殴るぞ」
剛は、過去の私との事を話した。すると、メンバー全員が黙り込む。
最初にその沈黙を破ったのは、博君だ。
「まぁ、ファーストキスにはこだわらないよ、俺は」
「確かにな。あっちがあるし」
准君が続く。
「あっち?」
馬鹿な剛は意味を分かっていない。
「つまり、全員泉が好き、と」
結局まとめるのはリーダーのまーくんだ。
メンバーはうんうん、と頷くと、勢いよく右腕を伸ばし、右手を重ねた。
「絶対に泉を傷つけるような事はしないこと」
「おう!」
「絶対に泉の気持ちを優先すること」
「おう!」
「正々堂々と」
「おう!」
だからなんでこいつらこんなに団結力があんの。
コンサート前かよ。