第2章 一章「朝の日課はウィッグを被る事です」
朝食のいい匂いにつられたのか、みんながリビングに顔を出した。
揃って、食卓につく。
「おいしいよ、泉!」
「あっそ」
「もー、機嫌なおしてよー」
健ちゃんとはあれから目も合わせていない。あんなに軽々しくファーストキス奪いやがって……
ファーストキスはちゃんとしたかったんだけどなー
「でも、俺が泉のファーストキス奪っちゃったんだよね。ふふふ」
ガッゴッドスッバキッ
なんの効果音かは察して頂きたい。
「ね、俺のウインナーあげるからぁ」
「健、そんなんで機嫌直るわけないだろ」
「わぁぁぁぁぁい!!」
「ベタだな!」
「てか元々のテンション凌駕してるんですけど!」
そんな風にてんやわんやしていると、剛が一言漏らした。
「女がウインナーくわえてる姿ってなんかエロいよな…」
「くわえるとか言うな、食べてると言え」
「そこにつっこむの!?いや、そこもだけど!」
みんな朝から元気だなぁと思うくらいいいツッコミをしてくれる。楽しい朝だ。
「おはよう」って言える、言ってくれる相手がいるってこんなに幸せなんだな、と思う。
朝食を終えると、各々仕事に向かっていく。私が食器を片付けていると、ふと隣に誰かが立った。
「准君」
「俺も手伝う。今日俺撮影午後からだから」
「そっか。ありがと」
「んー」
「どしたの?」
顎に手を当て唸っている准君。
「男装してるんだから、言葉遣いも男っぽい方がいいかも」
「なんで准君は私の男装完全肯定派なんだろうか」